「とって」と「対して」は(誰にとっても)まぎらわしい違いの一つ / 日本語ラーニングサポートLLC
「とって」と「対して」はまぎらわしい違いですね
本日の勉強のテーマは「とって」vs「対して」です。
日々、日本語を勉強してくださっている皆様には本日も私たちJLS(日本語ラーニングサポート)のウェブサイトを御覧いただき誠にありがとうございます。
今年も東京に春めく頃になり、JLPTの受験をお考えの皆様にはお申し込みの時期ですね。
いろいろな外国語学習の例に漏れず、日本語の勉強も毎日休まないことが大切であり、外国語であるからには全てが難しいですね。
例えば発音一つ取ってもなかなか思うように話せないものです。
↓
・・・●「 (私にとって)日本語の『っ』の音は(聞こえないから)難しい!」
スクールに通って勉強していれば授業のための準備だって大変です!
↓
・・・●「 (仕事をしている私にとって、)今日のホームワークは多すぎる!」
こんな風に「私にとって◯◯は・・・!」と言いたいことだって多いものです。
毎日続ける勉強は、それがいかに楽しい外国語(日本語)の学びであっても本当に大変ですし、、
「もう無理だ!」
「出来ない、、そして分からない!」という「壁」には必ず出合うものです。
そんな時にもやっぱり諦めない継続力が大切なものですが、頑張って考えるほど分からなくなることもあります。
自分の言葉を何回もリピートしてみると、分かっていたはずの日本語の文法に疑問を感じる気がします。
「あれ?」
● 日本語の「っ」は私に対して難しい??
● ホームワークは私に対して多すぎる??
「とって〜」で話すんだっけ?
それとも「対して〜〜」で話すのが正しいのかな?
(英語にすると確か「とって」も「対して」も ‘for~’ だから・・・、)
なんだか「とって」も「対して」も2つとも似ている感じがして、考えるほどに分からなくなってきますね!
そうですなんです!
「とって」と「対して」は、大変まぎらわしい違いの一つと言って違いありません。
二つは「まったく違う言葉だ」と勉強中には確認していたはずなのに、いざ使おうと思うと「あれ?この場合は・・・」と悩んでしまうものです。
「?」が目の前に現れた時、、、
それは同時に日本語のレベルアップのチャンスでもあるに違いありません。
さあ、集中力をフル回転させて日本語で話されている世界を思い描きましょう。
・・・↓
【クラスの先生が何かを話しているのですが、難しくてよく分からない】
↑こんな場面をイメージしてください。
ー A先生は私にとってきびしい・・・。
ー A先生は私に対してきびしい・・・。
上の2つの文を見ると、確かに「あれ?」と思ってしまうところです。
上の文例と下の文例では何か同じではない感じがしますが、具体的にどう違うのかと言うとハッキリ言葉にして説明しにくいものです。
■「A先生は私にきびしい・・・。」
これは間違いのない日本語の文ですが、じゃあ「とって」と「対して」の2つの文と何が違うのでしょうか。
・・・・・。
少しばかり前置きが長くなりました。
さあ、ウォーミング・アップはここまで!
ここからしっかり「とって」と「対して」という2つの言葉の違いを考えてみたいと思います。
皆様の日々の勉強の一助として、良い日本語のためのヒントを見つけていただければ嬉しい限りです。
<目次>
1,「Aさん」と「仕事」と「とってと対して」
2,「◯◯にとって」の文例
3,「◯◯に対して」の文例
1,「Aさん」と「仕事」と「とってと対して」
まず、以下の2つの文を読んでみましょう。
①:Aさんにとって、仕事はいきがいだ。(※いきがい:毎日の楽しみ、IKIGAI)
②:Aさんは、仕事に対してまじめだ。(※まじめ:ちゃんと頑張っている)
①も②も「Aさん」から始まって、次に「仕事」という言葉がありますね。そして「・・・だ。」という文の最後の部分で終わります。
パッ!と見たフィーリングでは《とても似ている感じ》がします。
①②のどちらも「Aさん」のことを「仕事」について話しているような気がしますね。
【大切なポイント!】
では、①と②の同じではないところを探しましょう。
①では、「Aさん」→「(に)とって」→「仕事」→・・・だ。
②では、「Aさん」→「仕事」→「(に)対して」→・・・だ。
このように言葉が並んでいますね。
これは、とても大切なポイントです。
「とって」も「対して」も助詞「に」を直前につけるタイプの言葉であることは間違いがないようです。ですから、以下のようにセットにします。
①set【「に」+「とって」 】
②set【 「に」+「対して」 】
↑
①setと②setのそれぞれ、「に」でコネクションを作っている文中の一つ前の言葉(単語)と【セット】の形を作って見てみましょう。
①【 Aさんにとって 】
②【 仕事に対して 】
→①【 Aさんにとって 】・・・「とって」がAさんにフォーカスしていること
→②【 仕事に対して 】・・・「対して」が仕事にフォーカスしていること
このように、①と②それぞれの文で何が話されているのかハッキリしてきます。
↓↓つぎのSTEP↓↓
①の文をバラバラにしたところから考えます。
Aさんにとって、「・・(どう)・・」だ。 = Aさんにとって、「仕事はいきがい」だ。
Aさんが感じていますね。つまり、Aさんから見ているフィーリングです。
Aさんにとって、「仕事はいきがい」だ
↑主体 ↑主体のフィーリング
【まとめ】↓↓※このように「Aさん」と「仕事」のポジショニングが分かります。
ウチ<Aさんの「フィーリングは・・・だ」>ウチ
=== [なにか]ソト(←例①では「仕事」)
②の文は「対して」のセットの外の部分から考えます。
Aさんは、・・・まじめだ。(Aさん=まじめ(な人))
⇒みじかい文が出来ました。(◯)「Aさんは、まじめだ。」
上の(「 」の)文だけでも、日本語として問題ありません。
そこに情報(info./インフォメーション)をプラスしましょう。
Aさんは、まじめだ。+「仕事に対して」=②Aさんは仕事に対してまじめだ。
↑※(+info.:情報)
本当にまぎらわしいのですが、日本語では文の真ん中パートに情報(+info.)が入るパターンが普通ですね。
Aさんは、まじめだ。
ー Q「何に?」
・・・A「仕事」に対して(まじめ)です。
【まとめ】※以下のように「Aさん」から「仕事」へ向かう気持ちが分かります。
ウチ<Aさんは「・・・だ」> →→→ ソト[なにか]ソト(←例②では「仕事」)
できるだけ分かりやすいようにと思って①②ともに【まとめ】の図式を書いてみましたが、以下のように整理します。
①Aさんにとって・・・・Aさんのフィーリングです。Aさんになったつもりで考えればOKです。
②仕事に対して・・・・何かのターゲットに向かうアプローチです。Aさんが「仕事」に向き合う<A→仕事>の【ソト】への‘見る動き’や‘意識を向けること’をイメージしましょう。
2,「◯◯にとって」の文例
Aさんにとって、仕事はいきがいだ。
パターンを確認します。
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Aさんにとって、「なに」は「・・・だ」
↑誰の[感じ] ↑何のこと ↑フィーリング
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以下には、「(に)とって」の文例を挙げます。
<人>にとって、
ー アスリートにとって、食事は仕事だと言える。
ー (日本で育った)私にとって、『BR』は「31(サーティワン)」だ。
ー 子どもにとって、親は将来のモデルであるだろう。
ー 多くの人にとって、納豆や生魚は食べづらいものだ。
<動物、生き物>にとって、
ー パンダにとって、笹は食べ物である。
ー 猫にとって、マタタビはお酒かドラッグのようなものだ。
ー セミにとって、夏は短い生を歌う季節だ。
ー ある種の鳥にとって、人間の声真似は朝飯前である。
<命(あるいはその近くに)あるもの>にとって、
ー ある種の植物にとって、実を食べる動物は子を残すための助けである。
ー ウイルスにとって、人の集まる場所以上に素晴らしいところはない。
<「生物」でしょうか?>にとって、
ー コンピューターウイルスにとって、ネットに繋がっていないパソコンは棺桶のようなものだった。
ー 作中の登場人物にとって、作者とは神に等しい存在である。
ー 人形にとって、子どもに遊んでもらうことこそ幸せだろう。
<モノ、何か【OK】>にとって、
ー 服にとって着てもらうこと、道具にとって使ってもらうことが一番の喜びであるだろう。
ー この家にとって、柱の傷も壁の落書きも人が暮らしていた記憶なんだ。
ー A町にとって、工場は住民の生活を支えるためになくてはならないものだった。
ー 地球にとって、月は家族のような恋人のような存在だと思う。
・・・。
いかがでしょうか。
生き物でない名詞[◯◯(にとって、)]でも、そこに私たちが心を感じられたりイメージできたり、つまり人の生きる温かさや社会性を持って考えることが出来れば文を書くことが出来るようです。
皆様はどう感じましたか?
<モノ、何か【NG】> 以下のような文は不自然に感じますね。
(✘)魚や多くの食材にとって、夏は腐ってダメになりやすい季節だ。
→「あ、お魚置きっぱなしにしないで!ちゃんと冷蔵庫に入れておいて!」
(夏は色々な食材がすぐに腐ってだめになってしまう。)
(✘)冷蔵庫にとって、毎日が仕事である。(休みはない)
→「冷蔵庫は24時間動いている。」
(✘)電車にとって(も)、朝のラッシュは苦しい。
→「乗る人だけでなく、電車の車体にもラッシュの混雑は負担がかかるだろう。」
(✘)極地の氷にとって、温暖化は大敵である。
→「現在の地球温暖化は、極地の氷にも大きなダメージを与えている。」
3,「◯◯に対して」の文例
Aさんは、仕事に対してまじめだ。
パターンを確認します。
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Aさんは、「なに」に向き合っていて(=対して)、「どう」だ
↑誰のこと ↑外側のターゲット ↑「誰」について話したいこと
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以下には、「(に)対して」の文例を挙げます。
<人 → 人>に対して
ー 赤ちゃんは生まれた時、まわりの大人に対して笑顔を見せるが、これを「エンジェル・スマイル」と呼ぶ。
ー 親は子どもに対して甘いばかりでも厳しすぎても良くない。
ー 彼女は彼に対して好意を持っているようだ。
ー 店員さんたちはどのようなお客様に対しても、いつだって笑顔で対応している。
<人 → 生き物>に対して
ー うちの父は猫に対して(は)とても甘い。
ー 人は野生の動物に対してほとんど為すすべがない。(日本の山でもハイキングコースを外れれば危険が待っている!)
ー 日本の子どもの多くは、カブトムシやクワガタといった夏の虫に対してプラスのイメージを持っていると思う。
ー 町内会はゴミ置き場を荒らすカラスの群れに対して、徹底的な対応を行った。
<生き物 → 人>に対して
ー オウムやインコは飼い主に対して愛情を持って話している。
ー 猫という動物は飼い主に対して従順なだけではないぞ。
ー 犬は家族の中でも下と見た相手に対して(は)、厳しい行動を取る。
ー その大きな牛は闘牛士に対して怒りを露わにして一直線に突っ込んできた。
<人 → もの>に対して
ー 私たちは箸に対してもペンに対しても、大切に扱う心を忘れてはいけない。
ー 「いただきます」は、食べる人間の食事に対する感謝の心である。
ー 子どもたちは、スマホやパソコンに対して距離を取る時間も持たなければならない。
ー 良いビジネスマンはお金に対してどのような付き合い方をするか、いつもよく考えているものだ。
<人 → こと>に対して
ー A教授は、研究に対して最高の愛情を持って向き合っている。
ー 彼は家庭よりも仕事に対して多くの時間を費やして一生を終えたことになる。
ー (大人たちが)若い世代に対して手厚いサポートをすることが、老後支えてもらう安心を作ることにつながるのだ。
ー これからの時代、私たちは働くことに対して考え方を変えていかなければならないだろう。
<モノ、何か → 人> ※【モノ(何か)から人へのアプローチ】をする場合はどうでしょうか?
↓↓さあ、実際に文を作って検討してみましょう。
●この一冊の本は、彼に対して人生の大きなヒントを与えることになった。
↓評feeling:・・・う〜ん、、、。なんだか少し不自然な感じがします。
(◯)この一冊の本は、彼に人生の大きなヒントを与えることになった。
このように、シンプルな「に」の方がしっくりくる(自然な話し方である)ように感じます。
「に対して」は、ターゲットに向き合う働きかけです。モノ(何か)から外側への動きを出すわけですから、使うシーンは限られてくるようです。
その「モノ(何か)」がターゲットへ向かってぐっと押したり、身を乗り出したりするような‘迫る’イメージがほしいのです。
以下のような文でしたら問題なく話せることがフィーリング(日本語を話す直感)で分かります。
【OK】 結婚かキャリアか、その時‘社会’が私に対して人生の選択を迫っていた。
【OK】法は、この国の全ての人に対して権利と平等を保証している。
以下にもう少し書き加えます。
<モノ、何か → モノ、何か> ※【生き物でない何かと何かの間の動きに感じるアプローチ】を「に対して」で書いてみました。
ー 的の中央を捉えた矢は、ボードに対して真っ直ぐに突き刺さった。
(=)「的の中央を捉えた矢は、ボードに真っ直ぐに突き刺さった。」
ー この薬は黄ばみ汚れに対して素晴らしい洗浄力を発揮する。
(=)「この薬は黄ばみ汚れに素晴らしい洗浄力を発揮する。」
ー 時間は全てのものに対して、等しく変化を与える。
(=)「時間は全てのものに、等しく変化を与える。」
上の3つの文例は、どれもシンプルに「に」で「に対して」の代わりができます。
ただし、「に対して」を使って話すことで、よりハッキリと動きのイメージを伝えています。
黄ばみ汚れに・・・ vs 黄ばみ汚れに対して・・・
ターゲットを(他の何かではなくて)「それ!」と強く的をしぼるように名指しして、アプローチの発生していることや効果が大きいことを話せるのですね。
モノ(何か)から、モノ(何か)へ動きがあるものですので、自然化学反応や物理法則などというカテゴリーの事柄に関連するものがイメージできます。
「重力はあらゆる物体に対して作用する」
このような形の文を見つけることができるようです。
本日もJLSのブログ記事をお読みいただきありがとうございました。
ふとした瞬間、取り間違えて使ってしまいやすい「◯◯にとって、〜」と「◯◯に対して・・・」という話し方をピックアップして勉強してみました。
今回考えてみた内容は、2つの言葉を‘きちんと使い分けること’にポイントを置いて、それぞれの持つ第一義的な意味をキャッチすることです。
日本語を勉強していたり、毎日の生活の中で話していたりして、「あれ?」と言葉の選択に迷ってしまった時に思い出していただければ嬉しい限りです。
そして、日本語をスキルアップさせていく中で応用として実用場面で磨かれた使い方も探してみてくださいね。
外国語を話すことは面白い!そして楽しいものです!
「ぺらぺらの日本語上手」への道は長いものですが、小さな一歩がゴールへつながっていくでしょう。
私たちJLSはプロの日本語教師のチームです。
勉強していて困ってしまった時には是非レッスンにいらっしゃってくださいね。
日本語をやってみよう!
こう思ったら一度はプロの教師とマンツーマン(1対1授業は一番人気の学習サポート)、プライベートの日本語のレッスンを受けてみることをお勧めします。
きっと驚くような言葉の発見と、理想的な勉強の時間が見つかりますよ。
日本語ラーニングサポートは、海外からお越しの皆様を心より歓迎いたします