いも正月というお話を読んでみましょう!/日本語ラーニングサポートLLC

2025/01/05 ブログ

いも正月というお話を読んでみましょう!

皆さま、お正月は楽しく過ごされましたか?

もうお仕事も始まっている方も多いと思いますが、今年も一年頑張っていきましょう!

それでは、今日は「いも正月」というお正月に関係のあるお話をご紹介します。

是非最後までお楽しみくださいね!

 

「いも正月」

あるところに、茂作(しげさく)という息子とそのお母さんが一緒に住んでいました。

この茂作という男は、働くのが大嫌いでいつもお酒を飲みながら遊んで暮らしていました。

茂作は、何年も遊んで、とうとう家にお金がなくなってきたので、お母さんに言いました。

茂作:「お母ちゃん、おいら町に出て仕事してくるよ。」

母 :「ああ、そうかい。気をつけてね。」

お母さんは、茂作のために貯めていたお金を全部茂作に渡して、

母 :「これで、町へ行ってきなさい。」

と言いました。

茂作:「ありがとうよ。じゃあ、たくさん稼いでくるよ!」

 

茂作が町へ出てから、3年経ちましたが、茂作からは手紙一つありません。

お母さんは、ずっと茂作の帰りを待っていました。

しかし、茂作は町で全然働かず、またお酒を飲んで遊んでいました。

 

お正月の時期がやってきて、お母さんはごちそうを作ろうとしましたが、家にはお米がありません。

母 :「はあ、どうしましょう。何か食べられるものは…。」

あるものは、少しの芋(いも)だけです。

母 :「芋だけでもあるだけましね。」

お母さんは、川に芋を洗いに行きました。

そこに一人の旅人が通りかかりました。

旅人:「すみません。旅の途中で食べ物がなくなってしまい、3日間何も食べていないんです。食べ物を分けていただけませんか。」

母 :「それは、大変ですね。少しの芋しかありませんが、よければどうぞ。」

お母さんは、家にある芋を茹でて、旅人に食べさせてあげました。

旅人はとてもお腹が空いていたので、バクバクと食べました。

旅人:「すみません。おかわりいただけませんか。」

母 :「ええ、どうぞ。」

お母さんは、お正月用にとっておいた芋も全部茹ではじめました。

そして、息子の茂作のことを旅人に話しました。

母 :「私はね…お金などいらないのですよ。町でたくさん働いて、立派になった息子を見るのだけが楽しみでね…。」

旅人:「そうですか…。早く息子さんが帰ってくるといいですね。」

その話を家の外でそっと聞いていた者がいました。

息子の茂作です。

茂作は、3年間でお金を全部使ってしまい、食べるものもなくなってしまったので、しかたなく家に帰ってきていたのでした。

茂作:「お母ちゃん…そんなふうに思ってくれていたのか…」

茂作は、お母さんの話を聞いて自分が恥ずかしくなって、もう一度町へ行って今度はちゃんと働こうと思いました。

すると、家の中で旅人がお母さんに言いました。

旅人:「ちょっと山に荷物を置いてきてしまったので、取りに行ってきます。」

母 :「ええ、その間に芋を茹でておきますから、ゆっくりどうぞ。」

旅人:「じゃあ、行ってきますね。」

茂作は、旅人に見つかってはいけないと、慌てて物置に隠れました。

旅人は山を登っていって、途中でこう叫びました。

旅人:「芋はもうできましたかー?」

母 :「いいえ、まだですよー!」

旅人:「もうできましたかー?」

母 :「もうすぐですよー!」

旅人の声はどんどん遠くなっています。

旅人:「もうできましたかー?」

母 :「できましたよ!」

旅人:「それじゃあ、ドアを開けて待っていてください!」

旅人はずいぶん遠くまで行ったようで声はもうほとんど聞こえなくなっていました。

お母さんはドアを開けて、旅人が帰るのを待ちました。

すると、どこからか急に強い風が吹いて…

ビューーーーー、ビューーーーー!

たちまち物置に隠れていた茂作は風に空に飛ばされて、家のドアの前にドスンと落ちました。

母 :「まあ!茂作!戻ったの!?」

すると、茂作の後ろにこれまた大きな袋がドン!ドン!とたくさん落ちてきました。

中を見てみると、お米やら魚やら色々入っています。

母 :「これは?」

茂作:「いや~俺にも分からないよ。」

二人が目を丸くしていると、どこからか声が聞こえてきました。

「とてもおいしい芋でしたよ。お二人がいつまでも幸せに暮らせますように。」

お母さんと旅人は、山に向かって丁寧なお辞儀をしました。

母 :「さっきの旅人さんはきっと神様に違いないわ!」

茂作:「そうだな。ありがとう。神様!」

それから茂作は、毎日働くようになり、お母さんにおいしいものをたくさん食べさせてあげましたとさ。

 

 

いかがでしたか。

「いも正月」というお正月のお話でした。

ここからは、このお話に出てきた文法を少し学習してみましょう!

 

今回ご紹介するのは「~やら~やら」という文法です。

本文の中では「中を見てみると、お米やら魚やら色々入っています。」と書いてありましたね。

この文法はどういう意味なのでしょうか。

「~やら~やら」は、「AもBも色々~」という意味で例を挙げる時に使われます。

あれもこれもあってごちゃごちゃしている、忙しいというニュアンスがあります。

ですので、普段はネガティブな場面で使われることも多いです。

 

Sample1 最近は試験やらバイトやらで忙しい。

Sample2 部屋の中は、洗ってない服やらお菓子のごみやらで散らかっている。

Sample3 あの先輩と飲みに行くと、愚痴やらうわさやら聞きたくないことを聞かされる。

Sample4 目がかゆくなるやら鼻水が出るやら本当に花粉症は嫌だね。

 

一方で、「お米やら魚やら色々入っています。」という本文の中の一文には、そこまでネガティブな意味が入っていませんね。

では、どうして「~やら~やら」が使えるのかといいますと、これは「お米とか魚とかが整理されておらず、ごちゃごちゃとたくさんの物がいくつかの袋にまとめて入っている」という状況を表しているからです。

このように、片付いていない、ごちゃごちゃした状態を詳しく表したいときにも「~やら~やら」は使えるのですね。

 

この文法は、「~とか~とか」ともよく似ていますが、「~とか~とか」にはごちゃごちゃしているといった意味は特にありません。

ですので、ニュートラルに使うことができます。

Sample1 コンビニでお茶とかおにぎりとかを買った。

Sample2 中国語とか韓国語とかアジアの近い地域の言語は、日本人にとって学びやすい。

Sample3 そんなに熱が出ているなら、病院に行くとか薬を飲むとかしたら?

Sample4 運動会では、100m走とか縄跳びとかをしようと思います!

 

「~とか~とか」はただ例を挙げているだけなので、あれもこれもあって大変だというような強い意味がありません。

皆さんもこの例文を見ながら「~やら~やら」と「~とか~とか」の使い分けを是非マスターしてくださいね!

 

本日は、「いも正月」というお話と「~やら~やら」という文法についてご紹介しました。

お楽しみいただけましたでしょうか。

それでは、今日はここまで!

また次回のブログでお会いしましょう!