は が の違いを考えましょう / 日本語ラーニングサポートLLC

は が の違いを考えましょう。
助詞である「は」と「が」の違いが分からないという質問をよくいただきます。
■私は、山田太郎です。
●私が、山田太郎です。
※山田太郎・・・人名、日本語として代表的な男性の名前です。
「は」を使った■の例文
「が」を使った●の例文
2つの例文を示しました。
確かに、「は」「が」以外は全て同じ形をしていますし、意味も〈私=山田太郎〉と同様のようですから似ていますね。
それでは、■と●の文が同じ文であるのかと言えば「ノー」と答えざるを得ません。
今日は「は」「が」の違いを、できるだけシンプルに考えてみましょう。
〈本日の目次〉〜「は」と「が」を見てみましょう〜
Q:私たちは一体いつ、「は」と「が」を似ていると思うのでしょうか。
A:それは、主語を示す時です。
[主語は・・・] or [主語が・・・]
※主語・・その文の中で話される主体となるもの、その語
主語を明示して「は」ないし「が」を後に接続して文を作ろうとする時に困ってしまうことが多いと思います。
以下のような場合です。↓↓
〈彼〉・・・日本人、会社員、28才、、、
→■[彼は日本人です] or ●[彼が日本人です]
〈天気〉・・・良い、一日中晴れる(予報)、快晴、、、
→■[天気は良いです] or ●[天気が良いです]
〈山田さん〉・・・お休みです、今日は会社にいません、休暇中です、、、
→■[山田さんはお休みです] or ●[山田さんがお休みです]
↑↑主語に対しての情報の中から一つを選び、シンプルに「は」と「が」の例文を三つ作りました。
左側に示した「は」の文■と、右側に示した「が」の文●は確かにそっくりですから、どちらが正しい日本語なのか迷ってしまうかもしれませんね。
■「は」と●「が」の違い、また使い方(選び方)については
2,「は」って何でしょう。
3,「が」って何でしょう。
この後に述べる「2,」と「3,」の項目で具体的に見ていきましょう。
一つ、重要な点をここに付け加えてお話します。
「は」と「が」の二つの助詞には[主語を示す]他にも、いくつも用法があることを確認します。
「は」について、例えば↓
■今日はねむい。
・・・今日、いつもと違って私は眠い。
■この温泉には毎年来ているんだ。
・・・「に」とセットの「には」です。[この温泉に]を強調しています。※他の場所と違って〈毎年〉来るのですね。
■東京では二回のオリンピックが開催されている。
・・・同じくセットの「では」です。[東京で]という特定の場所であることを強調しています。※他のどこかではないのです。
■ここでタバコを吸ってはいけません。
・・・文型(文パターン)の一つです。禁止の形「(動詞)ては いけません」です。
■何かあった場合はすぐに連絡してください。
・・・あるシチュエーションをピックアップして(焦点を当てて)話しています。[何か(問題が)あった場合]についてシミュレーションをする。あるケースを想定する、ということです。
など
「が」について、例えば↓
●たらこのおにぎりが好きだ。
・・・好き、という気持ちの対象物(ターゲット)を示していますね。
●スペイン語が分かる。
・・・上に類似していますね。分かる、という能力(ステータス)の対象を示しています。
●明日、夏祭りの花火が見られる。
・・・初級学習に登場の文型(文パターン)です。「・・が、(可能形の動詞)」です。※助詞として「を」を取ってもよいですが、基本としては「が」を推奨するのが標準的です。
●スペイン語を話すことができる。
・・・可能を示す文型です。「動詞辞書形ことが できる」です。
●北海道へ行ったことがある。
・・・経験を表す文型です。「動詞た形ことが ある」です。
など、
※実は、上の例文の「が」は全て「は」で代用するケースが想定できますが随分と意味が変わりますね。文脈(コンテクスト)が必要とされる場合です。詳しくはいずれ別の記事でお話します。本日の記事で学ぼうとする内容とはカテゴリー・コンセプト共に若干ずれますので割愛します。
Q:「は」ってどんな助詞なのですか?
A:これから話すことに先立って、トピックを紹介する助詞です。何についての話をするのか、ということです。
自己紹介のシーンを思い浮かべましょう。
※例えば日本語の勉強を始めた時、つまり「はじめての日本語」のクラスを思い出していただいても、とても良いイメージを持っていただけると思います。
【自己紹介】
皆さま、はじめまして!
私は、・・・・・・・〈名前、出身、お仕事、趣味について、etc.〉
『私「は」、・・・』←この形の文で話し始めることが基本であり、最も自然な日本語に違いありません。
■私・・・トピック / これから話を始めることの対象(ターゲット)
短い文から長い文まで、大雑把に言って、
「[トピック]は、・・(話したい内容)+です/ます。」
↑↑このパターンが日本語のコアとなる文です。
※更に話している人の気持を追加して、文の最後に助詞を加え以下のように考えても問題ありません。
「[トピック]は、・・(話したい内容)+です/ます(終助詞)。」
→例:私はボルダリングをしますよ!
上記の点をまず、しっかりと頭に入れてどのような時も日本語を使う場合には忘れないようにしましょう。
■「は」で、[話したいこと]を聞いてもらう
確認のために例文を思いつくままに書いてみます。テーマは日本人が、そしてもちろん私も、多く会話の際に話す季節とお天気です。関連するキーワードを四つピックアップします。
[3月]、[桜]、[お花見]、[雨]
①3月
3月は、東京の町にも桜の花が咲いてお花見のシーズンですが雨の日も案外に多いもので、季節の変わり目なのですね。
②桜
桜は、日本の一年の終わりである3月から新たな年度始まりの4月にかけて綺麗に花をつけて東京のあらゆる街角を雨の日にも晴れの日にも出会いと別れの色に染め上げてくれる。
③お花見
お花見は、「花」を「見る」とは書きますが、実際のところ花を愛でる芸術的な会というよりもお弁当を食べてお酒を飲む『花より団子』の春の集まりであります。
④雨
雨は、東京に桜の景観が美しい3月に案外に多く降るもので、ピンク色の儚い花をお花見シーズンのピークまでに散らしてしまうこともある。
「は」で示したトピックについて、それぞれの文で自由に話したいことを述べている点を確かめていただけたでしょうか。
口説いようですが、「(話したいこと)は・・」←この形で話すことが日本語の中心にある文の形なのです。
Q:「が」は、どのような助詞なのですか?
A:対象物を指し示す助詞です。つまり、重要な何かをターゲットとしてマークするのです。
例:私が、山田太郎です。※(←表題の例文)
①〈だれ〉= 山田太郎であるか?
②「私」= 山田太郎である。
①+②・・・「私が、山田太郎です」
このように順を追った①→②のフローから、完成した●の文「私が山田太郎です」を完成させます。
※上の表題文●のケースでは、主語が「が」で示されます。
ここから以下に、主語を示す以外の「が」を使った文を見ていきましょう。
例:たらこのおにぎりが好きだ。
①〈何〉= 好きなものであるか?
②「たらこのおにぎり」= 好きなものである。
①+②・・・「たらこのおにぎりが好きだ」
文末部分「好きだ」のターゲット(対象物)を示す「が」ですね。
例:スペイン語が分かる。
①〈何語〉= 分かる言語であるか?
②「スペイン語」= 分かる言語である。
①+②・・・「スペイン語が分かる」
文末部分「分かる」のターゲット(対象事項)を示す「が」ですね。
上に記した文例のように、動詞や形容詞などによる文末部分で話していることに対するターゲットを示すこと、これが「が」のメインの働きと考えると整理しやすいと思います。
表題文●の「です」という文末部分にも同様です。
「山田太郎です」という’話したいこと(=陳述部分)’ に対するターゲットが「私」なのですね。
■「私は・・・」という形で「私」についての紹介を述べることとは働きが全く異なっていることが確認できるでしょう。
続けて以下に三つの文例を提示しますが、これらは「が」を用いる文型(日本語の文パターン)である文です。
例●:明日、夏祭りの花火が見られる。
↑〈可能〉を表す動詞の文パターンです。
(動詞辞書形による基本文)「花火を見る。」→ 花火が見られる。(可能を伝える文)
※「を」→「が」に変更する。
一般的には基本文で「を」とセットになる言葉を、可能を示す活用の「可能形の動詞」を用いる文では「が」で表しましょう。
これは、「見られる」=[「見る」というアクションではなく、可能な状態を示す言葉] であるためです。
類似の「見える」「聞こえる」にも同様に、ターゲットを「が」で示したいですね。
例:ここから、夏祭りの花火が見える。
例:部屋の中まで。夏祭りの花火の音が聞こえる。
例●:スペイン語を話すことができる。
文パターン:「[動詞辞書形+こと] が できる」
※可能である、できることを表す文型ですね。
例:納豆を食べることができる。
例:ブラックの珈琲を飲むことができる。
など、
例●:北海道へ行ったことがある。
文パターン:「[動詞た形+こと] が ある」
※こちらは経験を話すための文型です。
例:新幹線に乗ったことがある。
例:JLPTを受けたことがある。
など、
このように「が」で文を作ることが決まっているパターンがいくつかあります。
汎用に使い勝手の良い言葉のパターンとして耳にされること、お話になることもきっと多く、このブログを御覧になっている皆さまは日常的に親しまれている言葉遣いではないかと思います。
本日のブログでは「は」と「が」について、出来るだけシンプルに整理してお話しました。
要点だけに記述を絞り、できるだけボリュームの出ない文字数でまとめることに努めました。幾分あっさりし過ぎたかもしれませんが本日の記事は以上で終了です。
外国語としての日本語の授業と毎日の勉強、またビジネスを含む広い日本語社会全般での実戦における「は」「が」の使い分けを網羅するためにはあまりに記すことのできなかった事項が多く(本日言及していない項目が大多数と言っても良い)続く記事にその点は任せます。但し、「は」とは何ぞや「が」とは何ぞやという疑問に明快に応える「日本語の勉強の『中心』」となるポイントを確かにお伝えしたつもりです。
本日眺めてみた「は」と「が」に関する見解の基礎をケースごとに応用することで全ての関連する日本語の文が形作られていくはずです。
まずは、この第一歩から始めましょう。
助詞はとても複雑な働きを持った日本語の要素です。
「は」と「が」の使い方も日本語の文の数に応じて無数に存在すると言って良いのですが、絶対に押さえておいていただきたいポイントをもう一度ここで述べます。
「は」でトピックを示し、「が」でターゲットを明確に指し示す、ということです。
■春は桜の季節です。
●お花見がしたいですね。
このような具合に日本語で話しましょう。この記事で勉強したことをしっかり覚えていれば日本語のレベルが上っても、「は」と「が」において概ね全てのケースできれいな日本語を扱うことができるはずだと信じています。
皆様の日本語学習の一助としてご活用いただければ嬉しい限りです。
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p.s.文法や言葉を勉強した後には、読み物のトレーニングが実戦的な日本語力を養ってくれるものです。
ブログ連載中の〈物語シリーズ〉も併せて御覧くださいね。