「しまう」と「片づける」の違いを考えましょう/日本語ラーニングサポートLLC

2024/01/24 ブログ

今回は「しまう」と「片づける」の違いについて考えます。

どちらも外に出ているものをあるべき場所にもどす、おさめるというイメージの言葉ですが、どのように使い分ければよいのでしょうか?

まず皆さんに持って頂きたいイメージは、

「しまう」は元の場所に戻すこと

「片づける」はきれいに整理すること です。

これを頭に入れて例文を読んでいきましょう。

後半では似た意味の言葉や関連した言葉の使い分けについてもご紹介します。ぜひ使い方を一緒に考えながら最後まで読んでみてくださいね。


 

■「しまいます」

  →出したもの、使っていたものをもとの場所に戻す、という行為を指します。

例)

・上司「会議が終わったら、資料のファイルを棚にしまっておいてください。」

 山田「わかりました。」

 

・田中「あれ、はさみがない…。昨日ここにしまったはずなんだけど。」

 山田「はさみなら、さっきリンさんが使ってたよ。」

 

・山本「今日、なんだか暖かいですね。」

 田中「そうだね。今朝はしまっておいた春物の服を慌てて引っ張り出したよ。」

 

・田中「川本さん、来月で仕事辞めちゃうんだって。」

 リン「寂しさは心にしまって、送別会では笑顔で送り出してあげましょう!」

  →「喜び」「怒り」「恋心」など目に見えないものについてもつかうことができますよ。本来の居場所と考えられているところ(「心」や「胸の中」など)に戻してとどめておく、というイメージでしょうか。

 

☆また、「始めたことを終わらせる」とか「商売を辞める」という意味でも「しまう」という言葉が使われます。

例)

・店長「来月いっぱいで店じまいをしようと思うんだ。」

 店員「そうですか…。寂しいですが、コロナ禍以降客足がだいぶ減ってしまいましたから、仕方のないことですね。」

 

■「片づけます」

  →物が散乱している場所や乱雑な状態をきれいに整理整頓することを指します。さきほどの「しまう(=ものを元の場所に戻す)」ことを含め、要らないものを捨てたり、汚れている場所を掃除したり、物をきちんと並べたりしながらその場所をきれいな状態にする、というイメージです。

例)

・上司「明日取引先の社長が来るんだ。今日中に応接室を片付けておいてくれる?」

 田中「わかりました。」

 

・友人「子どもが全然部屋を片付けられなくて困ってるんだよね。」

 リン「子どもは散らかす一方だよね。遊び感覚で片づけられるように工夫してみたら?」

 

☆「片づける」は「物事を完全に終わらせて処理する」という意味でも使われますよ。

例)

・山田「今晩飲みに行かない?」

 田中「いいよ、でもこの仕事を片付けてから行くよ。先に行ってて!」

 

・リン「先輩、週末も出勤するんですか?」

 先輩「うん、この間の取引先とのトラブルの件が片付かなくてね。困ったよ。」

 

☆また、邪魔なものや人を始末する、消すという意味でも使われることがあります。人に使うと怖い意味になってしまいますから私たちが普段使うことはまずありませんが、特にドラマやアニメに馴染みが深い方であれば耳にしたことがある方も多いかと思います。

 

さて、ここまでそれぞれの言葉の概要をお話してきましたが、少しまとめてみましょう。

 

お母さん①「ごはんの時間よ。おもちゃをしまって、手を洗いなさい。」

    ②「ごはんの時間よ。おもちゃを片付けて、手を洗いなさい。」

 むすめ 「えー、もっと遊びたい!」

 

 違いはイメージできたでしょうか?①の指示では「出したおもちゃを元の場所(おもちゃ箱など)に戻す」ことを要求しています。②の指示もほとんど同じような意味で使われますが、「しまう」という動作も含め、汚れたところを拭いたり次に使いやすいように並べたりしてきれいに整った状態にしておくことまで要求していると考えられます。


 

最後に、片付けの際によく出てくる言葉について、レッスンの中でよく混乱の見られる言葉を少しご紹介します。

まず「並べる」「重ねる」。初中級ででてくる言葉です。「並べる」というのは2つ以上のものを列になるように置く、または隣り合わせになるように置く、という意味です。「イスを4つ並べる」と言えば、4つの椅子がそれぞれ隣り合うように規則正しく置く、ということになります。

対して「重ねる」というのは同じものを上にのせていくことを指します。お皿などをしまうときには重ねることが多いですね。「並べる」が平面的な動作であれば、「重ねる」は上へ向く立体的な動作であるわけです。

「重ねる」と似た動作に「積む」という言葉もあります。こちらも上へ上へ載せていくことですが、必ずしも「同じもの」である必要がない点、また「重ねる」がお皿などの平たいもののイメージであるのに対し、「積む」はタイヤや荷物などより大きく立体的なもののイメージである点が使い分けのポイントです。ぜひイメージを持って使い分けてみてくださいね。


 

さて、今回は「しまう」と「片づける」という2つの言葉を中心に使い分けを考えてみました。昨年末にお部屋やオフィスの大掃除をされた方も多いと思いますが、きれいな状態はキープできているでしょうか?数年前には「断捨離(だんしゃり)」という言葉が流行ったり、片付けインストラクターという肩書が有名になったりしましたね。特にレッスンをしていても色々な国の方がご存じで驚かされることも多いものです。身の回りを整えることは精神状態の安定にもつながるそうですから、今年はこまめに片づけをしながら気持ちよく過ごしたいものですね。



 

今週はJLPTの結果発表がありましたね。受験をされた皆さまは満足のできる結果となったでしょうか。見事に合格された方、今回は残念ながら合格とはならなかった方、それぞれに今後につながる伸びしろや課題点があるはずですから、ぜひ結果の詳細をしっかりと分析して、今後の学習や次回の試験に生かして頂ければと思います。私たち日本語ラーニングサポートも、夏のJLPTを見据えた皆さまの学習を全力でサポート致します。もちろん春に向けたビジネス日本語や発音矯正、日常会話など幅広くお役立ていただけますから、ご受講をお考えの方はお気軽にご連絡くださいね。

学習のご相談やレッスンのご予約はご予約フォーム(下記またはHP右上の緑色のボタン)またはお電話にて、教師一同皆さまからのお問い合わせを楽しみにお待ちしております。