「言う」と「話す」、「語る」の違いを考えましょう/日本語ラーニングサポートLLC
「言う」と「話す」、どちらも初級の段階で学ぶ言葉ですが、どんな違いがあるか知っていますか?「語る」という言葉も初中級あたりで触れるものの、「話す」と何が違うの?という質問もレッスンの中ではよくいただきます。
今回はこれらの言葉についてじっくり考えてみましょう。
大まかなポイントとしては、
言葉を声に出すことを指すのが「言う」
相手とコミュニケーションをとるのが「話す」
テーマにそってまとまった量を発話するのが「語る」ということになります。
まずはこれを頭に入れておきましょう。
後半では「言葉を発する」という点において似た言葉についてもご紹介しますから、ぜひそれぞれの使い方を考えながら読んでみてくださいね。
「言います」
→思っていることなどを言葉にして声に出すことを「言う」といいます。
基本的には誰かに伝えるための行為ではありますが、「言葉を発する」という行為自体を指すので相手がいなくてもできます。
例)
・上司「山田くん、リンさんに後で会議室に来るように言ってくれる?資料を渡したいんだ。」
山田「わかりました。」
・マリー「今のアナウンス、何と言っていたんですか?」
田中 「事故で電車が遅れていると言っていました。いつ来るかわからないし、タクシーを呼びましょうか。」
・山田「川田さん、さっきからずっと独り言を言っているんだ。ちょっと心配だよ。」
田中「彼女はいつもそうやってミスがないか確認しながら仕事をしているんだよ。」
…「言う」という行為は前述の通り相手がいなくても完結します。ですから上記の例でいえば「リンさんに会議室に来るように言う」「電車が遅れていると言う」ことに相手からの返事や反応はあまり関係がなく、特に相手のいない「独り言」も「言う」ことができるのです。
「話します」
→こちらは言葉で相手に伝えたり、コミュニケーションをとったりすることを指します。「言う」が動作主(言う人)のみでも完結できるのに対し、「話す」は相手がいることが前提となります。
例)
・田中「来季の経営目標は、もう決まっているんですか?」
上司「ううん、まだ。明日の会議で営業部と広報部の部長と話す予定だよ。」
・リン「今度の土曜日、雪まつりに行かない?もしよければ、奥さんも一緒に。」
山田「いいね!帰ったら妻にも話してみるよ。きっと喜ぶと思う。」
・川田「山本さん、結婚するんだって?」
田中「そうそう、課の同僚には明日話すそうです。」
…上記の例、来季の経営目標は他の部長の意見も聞きながら会議をして決める、土曜日の雪まつりも奥さんの気持ちを聞いてから行くかどうか決めるわけですから、やはり相手の要ることです。結婚などの報告や打ち明け話をする際には相手の返事というより「聞き手がいる」という意味において、相手が必要ということができますね。
「語ります」
→あるまとまった量の情報を、目的をもって、また順を追って相手に聞かせることを指す言葉です。こちらも基本的には聞き役になってくれる相手がいて初めて成立する行為と言えます。
例)
・山田「前の会社、社長が毎日のように社員の前で自分語りをしていたんだ。毎回1~2時間、あれはきつかったなあ。」
田中「それは大変だったね…。」
・田中「昨日経営セミナーに行ってきたんだって?」
リン「そうなんです。講師が日本の20年後の経済について語っていたんですけど、とても分かりやすくておもしろかったですよ。」
・山田「山本さんの上司ってどんな人なの?」
山本「ミスしても怒ったりせず語りかけるような優しい口調で指摘してくれる、落ち着いた人だよ。」
…最初の「自分語り」は特に求めてもいない相手の人生の話を長々と聞かされるわけですから、聞き手からするとなかなかつらい状況ですね。ただどの例においても「ある程度の量を順を追ってわかりやすく相手に話す」という行為であることが分かります。
さて、ここまでざっとそれぞれの言葉の概要をお話してきましたが、これらの言葉に「合う」をつけて考えてみましょう。
☆「言い合う」というのはお互いが自分の意見や考えを主張すること、口喧嘩に近いイメージの言葉です。相手の返事を気にせず一方通行にお互いが自分の言いたいことだけを言えば、コミュニケーションがうまくいかず喧嘩のようになるのはなんとなく想像できますね。
☆「話し合う」は議論をする、相談をするというのに近いでしょうか。相手とうまくコミュニケーションをとりながら、ひとつの結論を出す、という行為です。
☆「語り合う」というのはあるテーマについて、お互いが話をすることです。例えば「アニメの良さについて語り合う」「日本の未来について語り合う」のように大きなテーマやゴールを決めて、それに沿ってお互いの知識や考えに基づいて話を進めていく、という感じです。
いかがでしょうか?ここまでお話してきたポイントをぎゅっと詰め込んだような、明確な違いが見えましたね。
最後に、私たちの生活の中でよく使われる似た意味の言葉を2つご紹介します。
多く馴染みのある言葉「しゃべる」は「言う」と近い言葉ですが、「昨日は一晩中電話で友達とおしゃべりをしていた」のようによりサイズが大きくカジュアルなイメージの強い言葉です。彼はおしゃべりな人だ、というと必要以上になんでも言葉に出す人、話が長い人という意味になりますよ。
「伝える」というのもよく使いますね。こちらは相手が必要です。自分の気持ちや事務連絡など、相手に話してわかってもらうというのが「伝える」という行為です。「彼に明日15時に会議があるって伝えて!」のように、伝言(メッセージ)をお願いする時にも便利に使える言葉ですよ。
さて、今回は「言う」と「話す」、「語る」の3つを中心に、「言葉を発する」という意味の
言葉を色々とみてきました。一方的な発話なのか相手とのコミュニケーションなのか、またそのサイズなど様々な観点で使い分けられていることがわかりましたね。なんだかニュアンスの違う言葉がたくさんあって難しい…と感じられた方は、まずは教科書にも載っているような文型や語彙からを覚えるといいと思います。「○○さんが…と言いました」とか、「物語」「おしゃべり」など、まずは言葉や形を覚えて、そこからイメージをしてみるというのもおもしろいと思いますよ。日常生活には欠かせない「言葉を発する」という行為、それを何と表現するかも楽しんで考えてみてくださいね。
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