「明ける/空ける/開ける/開く」使い分けを考えましょう

2024/01/03 ブログ

「明ける」

「空ける」

「開ける」

どれも「あける」と読みます。また、「開ける」とよく似た「開く(ひらく)」という言葉も生活の中でよく耳にしますね。それではどんな場面でどの「あける」を使えばよいのでしょうか。今回はこれらの言葉の使い分けを考えます。


 

さて、今年も新しい一年が始まりましたが、皆さまはお正月をどのように過ごされましたか?お友達やご家族とにぎやかに、一人でのんびりと、レストランやホテル等サービス業に携わる方は忙しく過ごされているかもしれませんね。そんなお正月には決まった挨拶があります。「あけましておめでとうございます」、ご存じの方も多と思いますが、この「あけまして」は「明けまして」と書きます。

 

■明けましておめでとうございます

 →「明ける(あける)」は、ある時間や期間、状態が終わって次の期間や状態になることを表す自動詞です。お正月の場合は「年が明ける」、つまり古い一年が終わって次の一年になる、新しい一年のはじまりをお祝いしているわけです。

 

使える場面はお正月だけではありません。「明ける」は私たちがもっと身近に経験している言葉ですよ。

例)

・田中「おはよう。どうしたの、眠そうだね」

山田「昨晩新作のゲームをやっていたら面白くて、気付いたら夜が明けていたよ。」

  →「夜が明ける」、夜の時間が終わって新しい朝が来る、私たちが毎日経験している状態ですね。ここからもう少し意味を広げて、「長く続いた悪い状態が終わって良い状態になる」という意味で使われることもありますよ。

 

・上司「会議は来週の水曜だから、週明けまでに資料を作っておいてください。」

 山田「承知いたしました。」

  →こちらも先ほどと同じ考え方で、古い一週間が終わり新しい一週間が始まるとき、つまり多く月曜日のことを指します(一週間の始まりを日曜日とする考え方もありますが、多くの会社では土日が休みで月曜日から仕事がスタートするので、週明けは月曜日という認識で使われます)

 

休み明けはどうしても仕事のやる気が出ないなあ。

 

・毎年梅雨が明けると一気に暑くなります。



 

■今週の土曜日、空けておいてね!

 →まとまった休みの取れる機会には、誰かと予定をあわせて出かけるのも楽しいものですね。「空ける(あける)」は何もない状態にする、からにするという意味を持つ他動詞です。上の文では、他の予定を何も入れないでね、という意味になりますよ。

 

例)

・旅行や出張で長く家を空けるときは、エアコンや戸締りは何度も確認したほうがいい。

  →家に誰もいない状態にする、留守にするということですね。

 

・田中「優太君の結婚式、行く?」

友人「行きたいんだけど無理かな。店を空けるわけにはいかないんだ。」

  →店を留守にする、つまり店を休むということです。

 

・昨年のクリスマスは仲の良い友人たちとワインのボトルを3本空け、パーティーを楽しんだ。

  →こちらは物理的に、飲んでビンの中を「からにする」というイメージですね。


 

■寒くても窓を開けて、新しい空気を部屋に入れましょう

 →「開ける(あける)」は閉じている状態のものを開く、仕切りなどを取り除くといった意味の他動詞です。生活の中では一番よく使うので耳馴染みのある言葉だと思います。上の文、「窓」が屋内と外との仕切りになっているので、それを取り除いて(動かして)外の空気を中に入れる、という理解の仕方ができるわけですね。

 

例)

・このビンの蓋、かたくて全然開けられないよ。

 

・ 母 「知らない人が来ても、鍵を開けちゃだめだよ。」

 子ども「はーい。」

 

・クリスマスの朝、枕もとのプレゼントを開けてみるとずっと欲しかった本が入っていた。

 

・近所のパン屋さんは毎朝6時に店を開けてくれるので、朝ごはんに焼きたての美味しいパンが食べられる。

  →先ほどの「店を空ける」は店を留守にする、つまり営業しないという意味、今回の「店を開ける」は店のドアを開けてお客さんが入れるようにする、つまり営業するという意味です。声に出すと同じでも、漢字が違うと全く違う意味になってしまうのは面白いですね。

 

☆では、「開く(ひらく)」はどんな時に使うのでしょうか。

基本的に意味は「開ける」とほとんど同じですが、「開く」しか使わない言葉もあります。「開く」のイメージを考えてみましょう。

 

・博物館の重い扉を開くと、そこには歴史ある作品がたくさん並んでいた。

  →仕切り等を左右に押し広げて空間を作るイメージが「開く(ひらく)」にはあります。分かりやすいもので言えば「本」も同じです。くっついているページ同士を左右に広げる、つまり「開く(ひらく)」ことで読める状態にしているのです。

 

・次の駅では、右側のドアが開きます。

  →こちらは電車内のアナウンスや電光掲示板などでよく目にする一言。電車のドアも左右に移動して広がるので、「開く(ひらく)」が自然です。ただ先ほどと違い自動で「開く(ひらく)」ので自動詞として使われています。「開く(ひらく)」は形を変えることなく自動詞にも他動詞にもなれる言葉なのですね。

 

「開ける」との違いはこんなところにもありますよ。

・口を開ける

・口を開く

どちらも正しい言い方ですが、「あける」といえば物理的に口を開けること、「ひらく」といえば何かを話し始めることを意味します。同じように、

・目を開ける

・目を見開く(みひらく)

こちらも「あける」は物理的な行動を、「見開く」というと驚きなどの感情をもって目を大きく開いた、という意味になります。同じ意味の漢字でも全く違う様子を表すというのは興味深いですね。

 

他にも「開く(ひらく)」を使う言葉はたくさんあります。

「ウェブサイトを開く」「心を開く」など、物理的な実体のないものにも使うことができますし、「海開き」「山開き」のように広く一般に開放する、という意味の言葉にも「ひらく」が使われます。和食の「あじ(魚)のひらき」という食べ物は、魚のお腹に切れ目を入れて本のように開き、味付けをして乾かします。外側は歯ごたえがあり中はふっくら、しょっぱい味付けがご飯によく合っておいしいですよ。

 

また、先ほどから出てきている「お店」ですが、「開く(ひらく)」を使うとまた意味が変わりますよ。

店を開ける(あける)…前述の通り、入り口を開けてお客さんが入れるようにする、営業をするという意味。

店を開く(ひらく)…店をオープンする、その店、その場所での営業を開始するという意味。

⇒一番最初に「店を開いて(ひらいて)」、通常営業の際は店を「開けて(あけて)」、店を「空ける(あける)」ときにはお休みするわけです。ちょっと頭が痛くなってきますね。


 

さて、今回は「あける」という言葉の使い分けを中心にご紹介してきました。どの「あける」も私たちの身近にあるものばかりですから、使い方のイメージはしやすかったのではないでしょうか。同じ言葉でもどの漢字を使うかで全く意味が変わってしまうというのは、難しくも勉強しがいのある部分ですね。そして、漢字を使わない話し言葉では文脈で見分けることになります。何を(何が)「あける」のか、よく聞いて判断しましょう。


 

日本語ラーニングサポートは、年始も変わらずプロの日本語教師によるオンライン個別レッスンをお届けしております。新しい一年に学習方法も心機一転、フレッシュな気持ちで新たな勉強を始めてみるのはいかがでしょうか?春に向けたビジネス会話のスキルアップに、その先には夏のJLPTも控えていますから、今年も都度目標を定めて学習を進めていきましょう。学習のご相談やレッスンのご予約はご予約フォーム(下記またはHP右上の緑色のボタン)またはお電話にて、教師一同皆さまからのお問い合わせを楽しみにお待ちしております。