「上に」「上で」「以上」「~上」、「上」のつく言葉を上手に使いましょう。

「上」のつく言葉を上手に使って話しましょう。
今回は少し上級のお話ですが、混乱しやすい部分ですので特にN2以上を目指す方はしっかり覚えて使いたいところです。「上」という字を使う文法はたくさんあるのですが、今回は
①情報を重ねて話す「上に」
②物事の順番を表す「上で」
③主張や決意を表す「以上」
④立場や観点を表す「~上」の4つの表現を中心にご紹介します。
■このレストランは料理がおいしい上にとても安いので、いつも行列ができている。
→「上(うえ)に」は「それに、~に加えて」という意味で、前の文にさらに情報を付け足して説得力を増すような言い方になります。冒頭の文であれば、レストランについて「おいしい」という情報にさらに「とても安い」という情報を付け足すことで人気の理由を分かりやすく話しています。
例)
・田中「高橋さん、転職するんだって?」
高橋「そうなの。うちの会社、給料が低い上に人間関係も悪くて。」
・山田「この映画、見たことある?おもしろいのかなあ」
田中「おもしろかったよ!アクションシーンが多い上にコメディ要素もあって、2時間半が短く感じたよ。」
・ニュースによると、今年の冬は暖かい上に天気も良い日が多いそうです。
・(×)リンさんの後輩は、仕事が早い上にミスが多いです。
→「上に」というのは同じような情報を重ねて説得力を増す言い方なので、「上に」の前に良いことが来れば後ろにも良いことが、前に悪いことが来れば後ろにも悪いことがきます。この文では前が「仕事が早い(良いこと)」なのに後ろに「ミスが多い(悪いこと)」が来てしまっているので、間違った文になってしまっています。
(○)リンさんの後輩は、仕事が早いですがミスが多いです。
(○)リンさんの後輩は、仕事が早い上に気配りもできます。
(〇)リンさんの後輩は、プレゼンが苦手な上にミスも多いです。
■先生と相談した上で、次回のJLPTはN1レベルを受験することにしました。
→「上で」は「まず〜してから…する」という意味で、物事の起こる順番を表します。ただ、単純に出来事を並べるわけではなく、「後ろの文の出来事が起こるためには、前の文の出来事が必要である」という場合に使います。例えば上記の例では、「受験するJLPTのレベルを決める」ためには「先生と相談する」ことが必要であったということです。
例)
・インターネットで買い物ができるのは便利だが、服だけは実際に試着した上で買うかどうか決めたい。
・出張の日程に関しては、取引先との会議のスケジュールを確認した上で決めましょう。
・このバスは前払いです。運賃をお支払いの上ご乗車ください。 *運賃(うんちん:バスに乗るお金のこと)
→名詞の形にくっつく時には「○○の上~」という形になります。
・(×)毎朝コーヒーを飲んだうえで7時のニュースを見ます。
→はじめにご説明した通り、「上で」を使うときには前の文と後ろの文の関係性が重要になります。「コーヒーを飲む」ことと「ニュースを見る」ことの間には関係がない(つまりニュースを見るためにコーヒーを飲むことが必要ではない)ので、「上で」は使えないわけです。
(○)毎朝コーヒーを飲んでから、7時のニュースを見ます。
■この会社で働く以上は、ITのスキルが必要だ。
→「以上」は「~なのだから当然…だ」という意味を表します。
後ろの文は「~すべきだ、しなければならない」とか「~が必要だ」「(絶対に)~する」といった言葉がくることが多いです。
例)
・田中「山田くん、今度プロジェクトリーダーをやるんだって?」
山田「うん。緊張するけど、やると決めた以上は最後まで責任を持って頑張るよ。」
・契約書にサインした以上、不満があっても契約を守らなければならない。
・専門学校に入学した以上、しっかり勉強して専門知識を身につけ、資格を取りたい。
・時間とお金をかけて旅行に行く以上はできるだけ多くの観光地へ行って楽しみたい。
・(×)山田「ちょっとコンビニに行ってくるね」
奥さん「コンビニに行く以上、アイスを買ってきて!」
→「以上」は前述の通り「~なら当然…すべきだ」のような意味で使われるのでこうした文だと不自然になってしまいます。また、苦労や時間、手間、お金のかかること(会社で働く、大学に入学する、プロジェクトリーダーを務めるなど)に関して使われることが多く、「コンビニに行く」程度のことにはあまり使われません。
(○)奥さん「コンビニに行くなら、アイス買ってきて!」
■この漫画はとても面白いが、言葉遣いが乱暴で教育上あまり良くないとされる。
→「~上(じょう)」は、「~の立場や観点で見る/考えると…」という意味で使われます。よくセットで使われる言葉がいくつかあるので、この機会に覚えてしまいましょう。
例)
・電車の中で電話をしたりお酒を飲んだりすることは、法律上禁止されていないが、マナーとしてはあまり良くない。
・山田「そういえば最近太田さん見ないね。」
田中「太田さん、先月退職したよ。健康上の理由だって。」
・江戸時代は歴史上数少ない平和な時代と言われているが、実際には色々な事件があった。
・タイムマシーンは理論上作ることができるそうですが、いつか完成するでしょうか?
☆上記の例のように「教育」「法律」「健康」「歴史」「理論」などの言葉に加え、「部下という立場上部長には強く言えない」「天狗は空想上の生き物だ」のように「立場」「空想(想像)」などの言葉もセットで使われることが多いです。また、「法律上は→法律の上では」のように「~の上では」といった言い方をされる場合もありますが、基本的には意味は同じです。
さて、今回は「上」を使った言い方をご紹介しました。それぞれの使い方をしっかり区別できたでしょうか?どれも比較的固い表現で、家族やお友達と話す時にはあまり出てこない表現ですが、会社で話す時、またニュースを見るときや公共サービスを使う場面など生活の中で触れる機会はたくさんあると思います。どんなときに、どんな言葉と一緒に使われているのか、どの使い方をされているのか…。ぜひ耳を澄まして聴いてみてください。
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