「の」/「こと」を上手に使い分けましょう

2023/12/13 ブログ

今回は「の」と「こと」の違いを考えます。

どちらも動詞の名詞化には欠かせないものですが、使い分けのポイントは、定型文を覚えることと使う動詞を考えることです。

基本的には文末に接続するときには「こと」を、強調文や知覚動詞には「の」を使いますが、他にも注目すべきポイントがいくつかありますよ。


 

まず、どんな時に「の」や「こと」を使うかを確認しましょう。

日本語の文を話す時、使う文法によっては「名詞にしかくっつかない!」というものがあります。例えば「~ができます」の形、

 

「わたしは料理ができます。」

 

これは正しい文です。この文では「名詞+ができます」という形をとるので、「料理するができます」のように動詞をそのまま入れることができないのです。でも動詞が入れられないのはちょっと不便、ということで動詞を名詞の形にする、「名詞化」をすることで使えるようにします。この「名詞化」をするときに使うのが、「の」や「こと」になります

 

(×)私は料理をするができます。

→(○)私は料理をすることができます。

 

こんなふうに動詞に「こと」や「の」をつけることで見かけ上名詞の形になり、より多くの文法で便利に使うことができるのです。

 

この「の」や「こと」は様々な場面で活躍します。

例)

・わたしは音楽を聴くことが好きです。

 

・山田さんが結婚したのを知っていますか?

 

・リンさんは絵をかくのが得意で、先月はコンクールで賞をとりました。

 

基本的にはどちらを使っても良い場合が多く、上の例文はそれぞれ「音楽を聴くのが~」「結婚したことを~」「絵をかくことが~」ということもできます。「こと」も「の」も同じ働きをするので、言い換えが可能なのですね。

 

しかし、使う言葉や文の形によっては一方しか使えない場合もあります。

 

■「こと」しか使えない場合

 

☆文法として型が決まっている場合があります。

 

例えば、先ほど例として挙げた「私は料理をすることができます」という可能を表す形ですが、こちらは「~ことができる」という決まった形で使われるため、「の」を使うことはできません。

(○)私は料理をすることができます。

(×)私は料理をするのができます。

 

他にも以下のような文では「の」は使えませんよ。

例)

・わたしは北海道に行ったことがありません。

  →経験を表す「~ことがある/ない」の言い方も形が決まっているので「の」は使えません。

・来週から出張で広島へ行くことになっています。

  →「~ことになっている」という予定や決定事項を言うときの表現、こちらも決まった形です。

・田中「来年の目標、決めた?」

 山田「うん、来年は健康のために毎朝6時に起きて体を動かすことにするよ」

  →「~ことにする」という自分の意思や計画を言う表現も決まっているので「の」は使えません。

 

☆「です」や「だ」にくっつく場合は、「こと」を使います。

 

例えばはじめの例文に出てきた、「リンさんは絵をかくのが得意で~」という部分を見てみましょう。

「リンさんは絵をかくのが得意です」/「リンさんは絵をかくことが得意です」

これはどちらを使っても大丈夫です。しかし、反対にしてみると

「リンさんが得意なのは、絵をかくことです。」

「~です」等の文末に直接くっつく形の場合には、「の」は使えません。「こと」を使います。

例)

・仕事をするうえで大切なのは、こまめに報告・連絡・相談をすることだ。

・田中くんの趣味は週末にキャンプをすることです。

 

■「の」しか使えない場合

 

☆「見る」「聞く」の前は「の」を使います。

例)

・昨日山田くんが奥さんと歩いているのを見たよ。(×歩いていることを~)

・海の向こうに虹がかかっているのが見えます。

・隣の部屋で誰かが喧嘩しているのが聞こえる。

 

 →「見る」「聞く」というのは「知覚動詞」を呼ばれます。目や耳や鼻などで感じることを「知覚する」というのですが、この知覚動詞にくっつく場合には「の」を使います。ただ基本的にはまずは「見る」「聞く」の二つを覚えておけば大丈夫ですよ。

 

☆強調文として使う時には「の」を使います。

 

他のものごとではなく○〇だ、と強調するような文の中では、「こと」ではなく「の」を使います。

例)

・店員「お待たせしました。こちら、アイスコーヒーのLサイズです」

  田中「僕が頼んだのは、Sサイズなんですけど…」(×頼んだことは~)

 

・彼が生まれたのは、映画館もレストランもない小さな田舎町でした。

 

・先輩「川田くん、またミスをしたんだって?」

川田「昨日ミスをしたのは僕じゃなくて中村さんですよ!」

 

☆その他いくつかの動詞では「こと」が使えないものもあります。

例)

・「待ちます」

―もう2時間も彼女が来るのを待っているんだけど、全然来ない。日程を間違えているのかな。

・「手伝います」

  ―荷物、重そうですね。運ぶのを手伝いますよ。

 

さて、今回は動詞の名詞化について、そして「こと」と「の」の使い分けについてご紹介しました。特に使い分けを学ぶ中ではグレーゾーンのものや「間違いではないけれどこちらのほうが自然」といった若干曖昧な部分があるので分かりづらく感じてしまうこともあると思いますが、まずは決まった形をまるごと覚えること、そしてたくさん使ったり聞いたりする中で自然な言い方を発見していくことが上達への一歩であるように感じます。特にどちらも使える場合には、周り人たちはどちらを多く使っているでしょうか?カジュアルな場面とフォーマルな場面で違いはあるでしょうか?ぜひ日常の会話を意識して聞いてみてくださいね。


 

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