「ために」/「ように」、どちらを使うでしょう?
目的の表現を学びましょう。
今回は「ために」と「ように」の違いを考えます。
どちらも目的を表す言葉ですが、使い分けにはレッスンの中でも多くご質問を頂くところです。形の違いを意識しながら読んでみてくださいね。
まず、下の文を読んでみてください。正しいのはどちらでしょうか?
(1) A,彼女においしい料理を作るために、料理の本を買いました。
B,彼女においしい料理を作るように、料理の本を買いました。
(2)A,漢字がきれいに書けるために、毎日練習しています。
B,漢字がきれいに書けるように、毎日練習しています。
正しく選べましたか?(1)はA、(2)はBが正解です。
でも、なぜでしょうか?
実は、「ために」と「ように」では使える言葉が違うのです。ここで、「意志動詞」と「無意志動詞」という二つの動詞のグループが鍵になります。まずはこの二つについて確認しましょう。
まず「意志動詞」というのは、言葉の通り「自分の意思(~したい、~しよう、という気持ち)をもって行う」動詞のことを指します。例えば「食べる」とか「走る」というのは自分で「12時だからお昼ご飯を食べよう」とか「今日は晴れていて気持ちがいいからジョギングをしよう」「少し時間に遅れているから走ったほうがいいな」と思ってその行動をするわけですね。
読む、書く、行く、開ける/閉める、つける/消す、なども意思動詞です。
では、「泳げる」、これは意思動詞でしょうか?
実は、私は泳ぐことができません。「泳ぎたい」という気持ちはあってたくさん練習しましたが、どうしてもうまく泳げないのです。ここで重要なのが、「泳ぎたい」から「泳げる」わけではない、ということです。こんなふうに自分の気持ち(意思)だけではどうにもできないこともあります。「泳げる」のように「~できる」という可能形の動詞は能力や許可を表しますが、それらは自分の気持ちだけでは変えられないことですから、基本的にすべて無意志動詞になりますよ。
もちろん他にも無意志動詞はたくさんあります。例えば、「テレビが壊れる」「雨が降る」「隣の部屋から声が聞こえる」など。これらは自分の気持ちとは関係なく起こることですね。こんなふうに自分の意思でコントロールできないことは無意志動詞に分類されます。
さて、ここまで意思動詞と無意志動詞についてご紹介しましたが、ここで冒頭の「ために」と「ように」の違いに戻りましょう。
☆「ために」とくっつくのは、「意思動詞」です。
■彼女においしい料理を作るために、料理の本を買いました。
→「作る」というのは意思動詞です。目的を言う場合、意思動詞は「ように」とはくっつかないので(1)ではBは間違いでAが正解、ということになります。
例)
・コンサートに行くために、明日は仕事を休みます。
・田中「来週アメリカに行くんだって?旅行?いいなあ。」
山田「国際会議に出席するためだよ。全然楽しくないよ…。」
また、「ために」という際には「名詞+の」の形で名詞も使うことができますよ。
例)
・家族のために新しいヒーターを買いました。
・健康のために毎日納豆を食べるようにしています。
→この場合、「家族のように」「健康ように」とは言えないので注意してください。
☆「ように」とくっつくのは、「無意志動詞」です。
■漢字がきれいに書けるように、毎日練習しています。
→「書ける」というのは前述の通り可能形、つまり「無意志動詞」ですね。無意志動詞は「ように」とくっつきますが、「ために」とはくっつきません。ですから(2)はBが正解ということになります。
例)
・日本の会社で働けるように、N2合格を目指しています。
・風邪が早く治るように、しっかり薬を飲んでよく寝ます。
・14時までに着くように家を出てください。
また、動詞の「ない形」のときは基本的に「ように」が使われます。
・病気にならないように、毎日30分は運動しています。
・子どもがゲームをしすぎないように、1日1時間までというルールを決めました。
←「ように」の前と後で動作主が違う場合でも使うことができます。つまり「ゲームをするのは子ども、ルールを決めたのはお母さん」という場合でも自然な文になるのです。反対に、「ために」は基本的に前の文と後ろの文の動作主は同じになりますよ。
さて、ここまで「ために」と「ように」の使い方の違いについて考えてきました。「意思動詞」と「無意志動詞」という分け方が大きな役割をもっていましたね。はじめて学ぶ方は少し難しかったかもしれませんが、「自分の気持ちでコントロールできるか」という観点で、色々な動詞を眺めてみてください。例文も多く読む中で、徐々に分かってくる部分だと思います。
また、基本的にどちらも同じように目的を表せるものですが、「ために」のほうが「絶対にこれを達成する」という強い意志が伝わり、「ように」はどちらかというと実務的な漢字が伝わるというニュアンスの違いがあります。慣れてきたらぜひ使い分けてみてくださいね。
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