「たて」「ばかり」「ところ」、どれが早いでしょう?

2023/11/20 ブログ

早さの表現を学びましょう。

どれも「~してからすぐ」という経過時間の短さを表す言い方ですが、それぞれどんな違いがあるのでしょうか?

今回はこれらの表現について、それぞれの違いや使い方を考えてみましょう。

 

早速、それぞれの表現を見比べてみます。

 

1)彼は来日したてです。

2)彼は来日したところです。

3)彼は来日したばかりです。  *来日(らいにち):日本へ来ること


 

1)彼は来日したてです。

 

「~たて」は「~してから時間が経っていない」状態を表しますが、「~たばかりだから新しい、新鮮だ、フレッシュだ」などポジティブな表現として使われることが多いです。

 

例)

炊きたてのごはんは温かくておいしい。

 

・あそこのスーパーはいつもとれたての新鮮な野菜を売っています。

 

・うちのレストランでは注文を受けてから料理を作るので、いつでも作りたての料理を提供しています。

 

→ご飯の話ばかりになってしまいましたね。「新鮮だ」というニュアンスをもつこの言葉、食べ物の話をするのにぴったりなのです。一般的に「炊きたて」「作りたて」と言えば料理が冷めない程度の時間、魚や野菜などはとってから数時間~一、二日以内に流通しているというくらいの時間感覚で使われているようです。スーパーなどに行けばすぐに見つかると思いますから、ぜひ意識して見てみてくださいね!

 

・彼は入社したてなんだから、分からないことも多くて当然だよ。

 

・田中くんは結婚したてでとても幸せそうだね。

 

→こちらは先ほどの食べ物の話よりはもう少し幅をとって、数週間~二、三か月以内くらいまで使えるでしょうか、どちらも「新入社員」「新婚」というフレッシュさを伝えることができます。

 

・(×)この子はいま寝たてなんだから、起こさないで。

 

→「寝る」など、「新しさ、新鮮さ」というニュアンスを持たない行為には使うことができません。「見る/聞く/知る/座る/歩く」などの動作も同じです。こういう時には「寝たばかり」や「寝たところ」という言い方をします。



 

2) 彼は来日したところです。

 

「~ところ」というのは「ちょうど今~した」と言いたいときに使います。まだ次の動作や状態に入っていない場合も多く、今回ご紹介する中では一番経過時間が短いと言えるかもしれません。上記の文であれば「たった今日本に着いた」という状況になります。

 

例)

・いま電車を降りたところですから、あと10分ほどでそちらに着くと思います。

 

・母「太郎、宿題はやったの?」

 太郎「今やろうとしてノートを開いたところだよ。」

 

・A「田中さん、今度部長になるって本当?」

   ―「うん、わたしも今先輩からその話を聞いたところ。」

 

・子ども「ただいま!」

 母「おかえり。ちょうど晩ごはんができたところだよ。」

 

☆前に着く動詞の形によっては、「~の直前/最中」という意味を表すこともできます。

 

・これからご飯を食べるところです。(V=辞書形、今はご飯を食べる直前である)

 

・彼は今仕事をしているところです。(V=て+いる形、仕事をしている最中である)

 

・いまちょうど君に電話をかけようとしていたところだよ。(V=意向形+た形、電話をかける直前であった)



 

3) 彼は来日したばかりです。

 

「~ばかり」も「~してすぐ、あまり時間が経っていない」ことを表すのですが、他の二つの文法と大きく違う点があります。それは実際の時間よりも、話し手が短いと感じるかどうかが重視されるという点です。どういうことでしょうか?

 

例えば、皆さんは日本語を学び始めてからどれくらいの時間が経っているでしょうか?先月始めたという方もいればもう何年も学び続けている方もいらっしゃるでしょう。では「1年」、これは長いでしょうか、短いでしょうか?これは人によってとらえ方が様々だと思います。直後を表す「ところ」や新鮮さを表す「たて」も使えません。しかし、1年という機関が短いと感じれば「ばかり」を使って表すことができるのです。

 

「私は1年前に日本語の勉強を始めたばかりですから、まだまだ学ぶことがたくさんあります。」

 

こんなふうに、経過時間を話者が短いと感じているかどうかが大きなポイントになるのです。

 

・この料理は作ったばかりだから、まだ温かいよ。

  →(○)この料理は作りたてだから…

(〇) この料理はいま作ったところだから…

 

・いま暖房をつけたばかりだから、まだ部屋が暖まっていないんだ。

  →(×)暖房をつけたてだから…

   (○)いま暖房をつけたところだから…

 

・優子ちゃん、20歳おめでとう。でも人生100年時代、まだまだ優子ちゃんの人生は始まったばかりだね。

  →(×)始まりたてだね。

   (×)始まったところだね。

 

もちろん「ばかり」は「~してすぐ」という状態を表すので、実際の経過時間が短い場合には「ところ」や「たて」と同じように使うこともできます。直後~数年後まで表せる、かなり幅広く便利に使える言葉なのですね。


 

さて、ここまで「たて」「ばかり」「ところ」についてそれぞれの違いを考えてみました。大まかな理解としては実質的な経過時間が非常に短い場面で使われやすいのが「ところ」、いちばん幅広く使えるのが「ばかり」でしょうか。どれも日常の会話や商品の紹介など様々な場面で使われていますから、ぜひ意識して探してみてくださいね。


 

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