日本語の初級文法をマスターしよう!教師の文法解説初級編~命令形っていつ使うの?~/日本語ラーニングサポートLLC

2023/11/01 ブログ

皆さんは動詞の「命令形」を学んだことがありますか?

「立て」「読め」「食べろ」…。その名の通り相手に強い指示や命令をする言い方ですね。

でも日常生活の中でこんなふうに相手に命令することなんてないし、上司や先輩だってこんな言い方はしてこないよ、という方がほとんどではないでしょうか。初対面の人に「あなたの名前を教えろ」とか、お客さんに「そこに座れ」なんていった日には、怒られるところでは済まないでしょう。

ではなぜ「命令形」というものがあり、それを勉強しなければならないのでしょうか?

今回はそんな疑問から、命令形について考えてみましょう。

 

まず動詞の命令形というのは、上記の通り相手に対する指示や命令を表す形で、初級段階で学ぶ動詞の活用形の一つです。形のルールは以下のようになります。

 

1group

行きます→行け

読みます→読め

急ぎます→急げ  …「ます」の前の音が(e)の音になり、「ます」が外れます。

 

2group

見ます→見ろ

食べます→食べろ  …「ます」をとって「ろ」をつけます。

 

3group

来ます→来い

します→しろ   …いつものとおり、これはそのまま覚えましょう。

 

☆ちなみに、「辞書形+な」の形で禁止形(~してはいけない、という禁止の意味を表す形)を作ることができますよ。このルールはどのグループでも同じです。(例:行きます→行くな、見ます→見るな、します→するな など)


 

それでは、命令形や禁止形を使う具体的なシチュエーションを考えてみましょう。


 

■「頑張れ!」

→私たちが最も身近に命令形に触れる場面のひとつが、スポーツなどの応援です。日本人は「頑張る」という言葉をよく使いますが、これを命令形にしたのが「頑張れ」です。みなさんも聞いたことがありますね。スポーツの応援ではそれぞれの動作を命令形にすることで応援の言葉として使っています。

 

例)サッカー:「走れ!」「パスを出せ!」「(ゴールを)決めろ!」

  野球:「打て!」「(打球がスタンドに)入れ…やった、ホームラン!」

  バレーボール:「(スパイクを)打て!」「拾え!」「返せ!」

 

特にスポーツの場面では、「走ってください」「拾ってください」なんて丁寧に言っている間にどんどん展開が進んでしまいますから、出来るだけ短い言葉で簡潔に言う必要があるわけです。「頑張っていただけないでしょうか」などと言っていたら盛り上がりに欠けますよね。

 

こんなふうに場面が刻一刻と変化する場合には、命令形や禁止形が使われます。

 

■「逃げろ!」

→頻度としては多くないですが、災害時や事件・事故に巻き込まれそうになったときなど、指示に急を要するときにも命令形や禁止形が活躍します。一分一秒を争う場面では、強く短い言葉で話すことで、より指示が早く伝わるようにするのです。

 

例)地震:「机の下に隠れろ!頭を守れ!」「本棚が倒れるぞ、離れろ!」

  津波:「とにかく高いところに逃げろ!」「海に近づくな!」

  事故:「危ないからそっちへ行くな、戻れ!」「早く救急車を呼べ!」

 

特に日本は災害も多い国ですし、事故やトラブルにだっていつどこで巻き込まれるかわかりません。こうした指示の意味が理解できるようにしておくことで、何かあった時に身を守ることができるのです。

 

さて、ここまでは「指示に急を要する場面」についてみてきましたが、使える場面はそれだけではありませんよ。

 

■「そういえば先輩が、資料をコピーしておけって言ってたよ。」

→他の人から聞いたことや何かで見た情報について、簡潔に相手に伝えたいときに命令形を使うと便利です。例えばこんなふうに、

 

・「こちらの店舗では全席禁煙となっております。お煙草はご遠慮いただきますようお願い申し上げます。」

 A:今のアナウンス、なに?

 B:店の中でたばこを吸うなって言ってるんだよ。

 

・「督促状 昨年の3月より、○○の料金が未納となっており…」

 A:これ、何の手紙?

 B:「とくそくじょう」だよ、早くお金を払えって。

 

日本で生活していると、敬語を使った丁寧な表現や難しい言葉にもたくさん出会いますね。意味を簡潔に教えてあげるときにはぜひ使ってみてください。

 

・天気予報「明日は午後から雨が降る可能性があります。傘をもってお出かけください」

 A:いま天気予報見てたよね。なんて言ってた?

 B:午後から雨が降るかもしれないから、傘を持って出かけろって言ってた。

 

・上司「Bくん、Aさんに、明日の11時にタクシーを予約しておいてほしいと伝えてくれるかな?それから、電話の横にある資料は動かさないように伝えておいて。」

 B:「さっき上司が、明日の11時にタクシーを予約しておけって言ってたよ。それから、電話の横の資料は動かすなって。」

 A:「わかった、ありがとう。」

 

天気予報のキャスターや上司は丁寧な言葉を使っていますが、その中から要旨を汲み取って簡潔に相手に伝えたい場合にはこうして命令形や禁止形が役に立つのですね。

 

■「優太、もう10時だぞ。そろそろ起きろよ。」

→親しい人同士で話す際、とくに男性の発話の場合にはこの形が使われることもよくあります。この場合、指示や命令というよりも「~したほうが良いよ」とか「~してよ」というニュアンスのほうが強い場合も多いです。

 

例)A:今度のJLPT、受けようか迷ってるんだよね…。

  B:挑戦してみろよ。毎日勉強頑張ってるんだから、絶対受かるよ。(→挑戦してみたほうが良い)

 

  A:なに、この手紙?彼女がくれたの?

  B:恥ずかしいから見るなよ。(→恥ずかしいから見ないでほしい)


 

さて、今回は命令形や禁止形について、いくつかの場面を見ながら具体的な使い方を考えてみました。「命令形」という名前ではありますが、意外と「命令」として使われる場面は少なく、簡潔な指示や応援、カジュアルなコミュニケーションの手段として使われていることがお分かりいただけたのではないでしょうか。今回ご紹介した以外にも、例えば道路標識などでは「スピード落とせ」とか「入るな危険」など命令形や禁止形を使った看板も多いですし、生活の中でも目を凝らしてよく見てみるとこの形に出会うものです。そしてこの形が使われるときは急を要する強いメッセージや大事な情報である場合も多いですから、やはりしっかり学んで意味が分かっていたほうが良いですね。たくさん例文を読んで様々な使い方を感じながら、学習に取り組んでみてくださいね。


 

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