日本語の初級文法をマスターしよう!教師の文法解説初級編~「しか…ない」の形を使ってみましょう~/日本語ラーニングサポートLLC

「~しか…ない」ってどんな時に使うんだろう?
「~だけ」と同じじゃないの?
今回はそんな疑問について考えてみましょう。
さて、10月も半ばに差し掛かり冷え込む日も増えてきましたね。レッスンをしていても少し風邪気味の方が多く、季節の変わり目だなとしみじみと感じます。学習も無理せず進めていきたいところですね。
今回は、初級文法「~しか…ない」を上手に使えるように練習します。実はこの文法、「知っているけどあまり使っていない」「使う必要性が分からない」という方が結構多いのですが、自然な日本語の会話には欠かせない、重要な文法なのです。以下、この「~しか…ない」についてじっくり学んでみましょう。
まずは二つの文を見比べてみてください。
①昨日美術館に行ったんだけど、お客さんが3人だけいたんだ。
②昨日美術館に行ったんだけど、お客さんが3人しかいなかったんだ。
それぞれどんな印象を受けるでしょうか。
「だけ」というのは簡単に言えば「only」、範囲や条件などを限定したり限界を表したりする言い方です。これを使った①の文は、「お客さんが3人いて、それ以外にはお客さんはいなかった」という意味になります。
対して②の文、こちらも「お客さんが3人いて、それ以外にはお客さんはいなかった」ことに変わりはないのですが、より「少なかった」というニュアンスが強調されています。「10人、15人とお客さんがいると思っていたのに、3人だった。とても少なかった。」という気持ちを伝えたいとき、「~しか…ない」という形を使うのです。
もう少し見てみましょう。
・a,今朝はコーヒーだけ飲みました。
b,今朝はコーヒーしか飲んでいないんです。
→こちらも「コーヒーだけを飲み、それ以外は飲食をしていない」という事実は同じですが、bの方は「いつもは朝ごはんを食べるのに今日はコーヒーだけだ、お腹空いた…」というニュアンスが伝わってきます。aの文ではこのニュアンスは出せません。
・一日8時間働いてもお給料は10万円しか出ないんだ。転職しようかな。
・頑張って半年間勉強したのに、前回の試験より5点しか上がらなかった。がっかりだよ。
→思っていたより少なくて残念だ、悲しい、驚いたなどの感情表現と一緒に使われることも多いです。
・小学生の時から勉強してきたはずなのに、英語を少ししか話せないのはどうしてだろう。
→私を含め日本人によくある現象ですね。実践練習の大切さを痛感します。
☆春から体重が7キロも減ったんだ。ストレスかなあ。
→「思っていたより多い」と言いたい場合には、「数+も」の形を使うと自然ですよ。
・昨日は3時間もゲームをしてしまった。明日から気をつけよう。
では、こんな文ではどうでしょう?
Ⅰ
③寝坊して大事な会議に遅刻してしまった。会社に着いたら謝るだけだ。
④寝坊して大事な会議に遅刻してしまった。会社に着いたら謝るしかない。
Ⅱ
⑤次の大会に向けて、ひたすら練習するだけだ。
⑥次の大会に向けて、ひたすら練習するしかない。
ここで注目してほしいポイントは、「選択肢が他にあるかどうか」です。Ⅰの場面では自分の寝坊によって大事な会議に遅刻しているわけですから、この人にひとまず「謝る」以外の現実的な選択肢はないわけです。こんな時には「~しかない」を使います。ですからこの場合は④の文の方が適切です。
一方Ⅱの場面、こちらは次の大会に向けた行動について話しています。何かの大会に臨むとき、どんな行動が考えられるでしょうか?試合なら相手を分析する、道具を新しくする、もちろん練習をする、食事や体調に気をつけるとか、色々とできることはあるでしょう。その中で、「ひたすら練習する」という行動を選ぶ。この場合は⑤の「だけ」を使うことができます。⑥の文も正しい形ですが、こちらからは「まだ実力が足りないけれど大会まであまり時間がないので、ひたすら練習する以外に選択肢がない」という、切羽詰まった感じが伝わってきます。
最後にもう一つ、使い方の例をご紹介します。下の会話を見てください。
上司:「リンさんは、日本語がとてもお上手ですね。」
リン:「いえ、まだまだです。日常会話や簡単な文章を書くことしかできません。ビジネス日本語はいま勉強していますが、とても難しいです。」
リンさんが上司に褒められています。「日本語がお上手ですね」―「まだまだです」というのはもはやテンプレートのようになっている気もしますが、注目して頂きたいのはその次の文。ここにも「~しかできない」の形が使われていますね。
「日常会話や簡単な文章を書くことだけできます」と言っても事実そのものは変わらないのですが、「~しかできません」という否定形をつかうことによって「謙遜」のニュアンスを強く出すことができるのです。そもそも「まだまだです」というのも謙遜表現ですから、その次の言葉でもしっかり謙遜表現で合わせた方が自然ですよね。もちろんすべての場面でこの形を使わなければいけない、ということではありませんが、「謙遜表現が使える」ということは相手との円滑なコミュニケーションにおいてやはり役に立つものです。
さて、今回はここまで「~しか…ない」の用法について、主に「~だけ」と比較しながら考えてきました。いままで「だけ」ばかり使っていた、という方は、この機会に「~しか…ない」の形に挑戦してみてください。自分の伝えたい気持ちやニュアンスがより正確に伝わり、相手との会話も弾んでいくはずですよ。
もっと日本語の文法や会話を学んでみたい、という方はぜひ私たちのレッスンをご活用ください。日本語ラーニングサポートでは年中無休にて、JLPTに向けた勉強や、ビジネス会話のスキルアップ、日常会話から発音矯正まで、プロの日本語教師による個別レッスンをお届けしております。レッスンのご予約、ご相談はご予約フォーム(HP右上緑のボタン)またはお電話にて承っておりますので、お気軽にお問い合わせくださいね。
皆さまからのご連絡を教師一同楽しみにお待ちしております。