助詞「に」と「へ」って何が違うの?/日本語ラーニングサポートLLC
助詞の「に」と「へ」って、なにが違うの?
日本語を学習されている皆さんの中には、こんな疑問を持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は同じように使われることの多いこのふたつの助詞について、考えてみましょう。
まずは助詞の「に」について。
助詞の「に」に関してはいくつか用法がありますが、そのひとつに「目的地や方向を言う」というものがあります。「わたしは来月アメリカに行きます。」のような使い方ですね。しかし、この文は別の動詞に変えても成り立ちます。「へ」です。
「わたしは来月アメリカへ行きます」、これでも良いのです。
しかし、全ての文が例外なく「に」でも「へ」でも良いかというと、実はそうではないのです。今回はそんな「に」と「へ」の違いを考えてみましょう。
(助詞「に」についてはこちらのプログにて詳しくご紹介していますので参照してみてください。
日本語文法が分かる!教師の文法解説初級編~助詞「に」を使って話してみましょう~/日本語ラーニングサポートLLC (nihongojikan.jp)
なお、今回は2番目の「目的地や方向を言う」用法についてのみ扱います。)
はじめにふたつの助詞の基本的な使い分けをご紹介します。
まず、「に」について。こちらは目的地や到達点、到着点を表します。つまり、向かう先がピンポイントでわかっている時に使います。例えば、
1)明日は会社の飲み会があるので、午後6時に「とりや」に行きます。
2)課長は来週出張で広島市に行きます。
この文では、行く先が「とりや」というお店、「広島市」などピンポイントで明示されていますね。こういう時には、「に」を使うのが自然です。
次に「へ」ですが、こちらは移動の方向を表します。先ほどの「に」では移動した結果の到着点に注目してその場所をピンポイントで表していたのに対し、「へ」というのは「そっちの方へ行く」というような少し広い範囲、つまり到着点を含めそこに向かう経路や方向に注目した言い方になるのです。
3)その鳥は羽を大きく広げて、北の空へ飛んで行った。
4)最近は涼しくなって、季節が段々と秋へ向かっているように感じます。
この二つの文では、「北の空」「秋」というのが移動の方向です。おそらく「北の空」は到着点ではないですし、「秋」にも2~3か月の幅がありますからピンポイントで指し示すのは難しいでしょう。こんな時、「へ」が活躍するのですね。
さて、基本的な使い分けは以上です。「に」は到着点、「へ」は移動の方向…。
では、これまで出てきた例文をもう一度見てみましょう。
1) 明日は会社の飲み会があるので、午後6時に「とりや」に行きます。
この文を午後6時に「とりや」へ行きます、に変えたらダメでしょうか?
→ダメ、ではないのですね。厳密には「午後6時までにとりやの方へ向かう」というニュアンスになり得るのでしょうが、どちらもほとんど同じこと。2)の「広島市に」を「広島市へ」に変えても同じです。「に」を使って目的地を表す場合はほとんどの文で同じような考え方ができるので、基本的に「に」は「へ」に変えても良いとされているのです。
では、次のような文ではどうでしょうか。
5)A、両親と家に帰ったら、飼い犬が私に向かって走ってきた。
B、両親と家に帰ったら、飼い犬が私へ向かって走ってきた。
→この文では「飼い犬のお目当てが誰か」ということが大きなポイントになります。私と両親が帰宅して玄関のドアを開けた時、飼い犬が喜んで走ってくる。その時の犬のお目当ては、父でも母でもなく、「私」一人なのです。この文のように「到着点」に極端に注目している文の場合は、「へ」を使うと不自然になってしまいます。よってAの文が適切と言えます。
6)A:雨雲は北西にゆっくりとした速度で移動しています。
B:雨雲は北西へゆっくりとした速度で移動しています。
→この文に関してはぜひ天気予報を実際に聞いてみて頂きたいのですが、Bの文、「へ」の方がよく使われるようです。雨雲や台風などの自然現象に関しては、その動きをピンポイントで特定するのが難しいため、「大体そちらの方向へ」というニュアンスで「へ」を使うのですね。
このように「に」と「へ」は基本的には同じように考えてよいものの、やはり「に」しか使えない、とか「へ」の方が自然、という場合も少なからずあります。多くの文に触れて見極める目や感覚を養っていくしかない部分もありますが、迷ったらぜひこの使い分けを思い出してみてくださいね。
さて、ここまで目的地や方向を表す「に」と「へ」の違いについて学んできました。この二つ、昔はもう少し使い分けがはっきりしていたようなのですが、時代とともに使い分けがあいまいになってきた部分があるようです。「そんなことを言われても…」、「結局どちらを使えばいいんだ」と言いたくもなりますが、言葉も生きもの。時代によって少しずつ姿を変えていくもので、100%確実なルールというのはなかなか見当たらないものです。
基本的な知識は頭に入れたうえで、多く日本語を聞き、読み、書き、話すこと。その中で少しずつ、感覚を身につけていきましょう。
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