日本語の教え方、外国人に日本語を話してもらおう vol.0〈外国語を教える前に〉 / 日本語ラーニングサポートLLC

日本語の教え方を勉強しましょう。

外国人に日本語を話してもらいたいと思った時、「外国語としての日本語」をどのように教えればよいのでしょうか。

教科書を手に相手と向き合えば日本人誰しもが’私たちの隣人’の言葉の教師です。

国語とは角度が違う日本語を理解して、様々な外国語の視点から日本語という外国語を読み解きましょう。

 

本日は本編を始める前の準備編として記事を用意しました。

日本語の先生、を始める上で欠かせない指導のポイントを押さえましょう。

 

〈これだけは欠かせない日本語の先生の心構え〉

 

①日本語は文型(文のパターン)から教えよう

「私は楠田俊之です。」

このように「。」がつくまでが日本語の一区切りです。

単語と助詞と複雑な述語部分をコントロールして日本語の文を話せるという技術は実に至難の業です。

短い文のパターン〈文型〉から丸ごと暗唱して、理屈に先んじて文の型と意味を勉強することが効果的です。

以下、一例として挙げます。

「明日、私は新宿へ行きます。」

↑どこかの行き先へ移動することを話します。

 

明日、私は2時に新宿へ行きます。

↑時間の情報を加えます。

 

明日、私は2時に花子と新宿へ行きます。

↑同伴者の情報を加えます。

 

明日、私は2時に花子と車で新宿へ行きます。

↑移動手段の情報を加えます。

 

明日、私は2時に花子と車で新宿へ行かなければなりません。

↑※文末述部の語尾操作/「行く」行動が必要であるという話者意識を示します。

 

このような具合です。更にもう少し言及しますと以下のように文パターンを考えます。述部となる文末部分のみ抜き出します。

〈義務〉行かなければなりません。

 

〈非義務〉行かなくてもよいです。

 

〈可能〉行くことができます。

 

〈行動選択例示/発生可能事象〉行くことがあります。

 

〈経験〉行ったことがあります。

 

動詞を活用して、複雑な語尾要素と組み合わせる【文法】は最低限の理解に留めることが上手な指導のポイントです。私がここで言う最低限とは、日本語の実用に際して支障をきたさない程度の言語構成的な理解を話者に持ってもらいましょう、という意図です。

つまり、「実用」を重んじて理論の学習割合を可能な限り削減するということです

箸を上手に使うことと、箸を使うための手の形や筋肉の動きを文章化することの関係に似ています。

 

さて、ここまでに挙げたいくつかの文例を見ると、日本語の教授の基礎的一例とは非常に簡素な国語の項目のように見えたかもしれません。

これから扱う日本語を教える技術とは、遠い国で話されている口頭音声コミュニケーションを理路整然と提示して体系に基づいた実用的なトレーニングを提供し、実践するものです。

想像してください。

ある日、宇宙船に乗ってやってきた宇宙人たちはどのようなファッションでどのような言葉を話しているでしょうか。

そのただの「音」を、「言葉」として整理する試みであり、そうして抽出した文法的な体系を一つのコミュニケーション技術として習得する挑戦こそが外国語の教室の活動なのです。

 

②日本語の音を大切にしよう

「よろしくお願いします」

たったこれだけの言葉をネイティブの音で話すことが、一体如何に難しいことでしょうか!

日本語の音は力強くはっきりとした息の音です。

これは開音節と言われる母音のパフォーマンスを強力に用いた言語的な性質が形成するものです。

母音とは体の内から口腔内まで発声器官内の阻害なく「伸びやかに口から発される大きく響く音」です。

日本語の音は一つひとつがはっきりと息にのった響きです。

「あ」「い」「う」「え」「お」の五母音をよく練習しなければなりません。

 

まずは教師も模範としての日本語の声の確認をしましょう。

息を長く吐いて、

「あー」「いー」「うー」「えー」「おー」

※口の中を順番に、力強い母音を作る発声のポイントを動かして(口の先から口腔内奥へ向かう半円のターンで、、、↓)

「いー」「えー」「あー」「おー」「うー」

真ん中の「あー」の時が母音の中でも最も大きく口中の空間が開いていることが感じ取れますね。

「自然に発声している普段の日本語の声」が伸びやかに聞こえればOKです。いつも口の中のどの部分を特によく使って話しているのでしょうか。息の通り方を再確認しましょう。それが、「口の形」です。

次は子音と組み合わせて、

[k]↓

「きー」「けー」「かー」「こー」「くー」

ki,iー  ke,eー ka,aー ko,oー ,ku,uー

繰り返しますが、息に乗せて響かせて発声を継続できる音が母音です

「きー」と音を続けた時に最初の一瞬間で子音の[k]が立ち消えて(発声から落ちて)「い」の音が綺麗に伸びていきますね。

 

特殊音素「ん」などの例外はありますが、概ね全ての平仮名にこのように母音が含まれて発声されていることが確認できるでしょう。外国語として日本語を聞き話す時には「ネイティブにとって当たり前の音」であるこの’平仮名の音’が案外に難しいものなのです。中国語っぽい日本語だなとか、英語っぽい発音の日本語だなとか漠然と外国語のニュアンスを感じる場合には、このように母音を含ませる発声のトレーニングを短時間行うことで、たいていは驚くほどに日本語らしく聞こえる発音に整います。

日本語を話す時はいつも一音ずつをきっちりと区切れるように話せなければなりません。

言うなればキータイピングや、ドラムでビートを刻むように平仮名の一音ずつを打つ楽器のように発音するべきだということです。

「お は よ う ご ざ い ま す」

「い た だ き ま す」

「よ ろ し く お ね が い し ま す」

全ての言葉がこの基本に沿って会話の中に現れます。

 

続けて50音を一歩目の段階としてよく練習しましょう。

[s]↓

「さー」「しー」「すー」「せー」「そー」

sa,aー ※shi,iー su,uー se,eー so,oー

【日本語の「し」は歯で尖らせるように[shi]と発音しましょう】

[t]↓

「たー」「ちー」「つー」「てー」「とー」

ta,aー ※chi,iー ※tsu,uー te,eー to,oー

【面白いですね。二つのイレギュラーがあります。’てぃ’のような音ではなく尖らせた[chi]、’とぅ’ではなく矢張り尖らせて[tsu]と発音しましょう】※つまり私たちの自然な日本語の音と言うことです。困った時、迷った時はナチュラルな日本人に立ち返って自分の音を確認すれば問題ありません。

[n]↓

「なー」「にー」「ぬー」「ねー」「のー」

na,aー ni,iー nu,uー ne,eー no,oー

[h]↓

「はー」「ひー」「ふー」「へー」「ほー」

ha,aー hi,iー ※fu,uー he,eー ho,oー

【息が喉から通る[h]よりも、吹くような[fu]と発音しましょう。蝋燭を吹き消す時のように’ふうっ’と】

[m]↓

「まー」「みー」「むー」「めー」「もー」

ma,aー mi,iー mu,uー me,eー mo,oー

[y]↓

「やー」「ゆー」「よー」

ya,aー yu,uー yo,oー

※や行の音はある観点からはキャッチしにくい音です。もし、あなたが教える外国の方の発音に違和感があれば[y]=[ia]このように二つの母音間の流れるような移動音として考えましょう。

[l]↓

「らー」「りー」「るー」「れー」「ろー」

la,aー li,iー lu,uー le,eー lo,oー

※日本語のら行音は時に[r]、また時には[l]に近く、音声的な許容範疇が二点に跨っているように見られがちです。簡潔には、一貫して[l]に統一すると発話中に間違いが起こりにくいでしょう

[w]↓

「わー」

wa,aー 〈びっくりした時に叫ぶように、です。「わあー」と〉

※[y]に同じく、違和感の発声する場合は[w]=[ua]と考えて練習しましょう。

[N]↓

「んー」

※難物です。「ん!」と力むように鼻に息を通して音を出しましょう。

 

 

ここまでで日本語の音を出す準備が出来ました。

以下には音を並べて言葉を作るためのポイントを述べます。

 

②−1)アクセント

日本語にアクセントってあるのでしょうか。

時に疑問をお寄せいただくことがありますが、日本語にアクセントは存在します

ストレスをかけて音を強調するわけではないので実際少し聞こえにくいときもあるのですが、日本語のアクセントとは音の高低差です

「あ、雨だ」←雨あめ:あ↓め

「飴、ある?」←飴あめ:あ↑め

※「ド」と「ミ」の二音階であると考えると分かりやすいと思います。

二つの音階を行ったり来たりして私たちは色々な文を作って会話しているのです。

指導の実際でまず気をつけるべき点は二つです。

 

■文中において、語頭の二音間で必ず高低のずれが発生する。

「にほんごのべんきょうをはじめましょう」

上のように平仮名をタイピングするビートが日本語の音であるならば、文中の語のひとかたまりを明確に示すことがアクセントの一つの役割です。

「日本語の」→「に↑ほんごの」

「勉強を」→「べ↑んきょうを」

「始めましょう」→「は↑じめましょう」

3つのブロックを繋げて「日本語の勉強を始めましょう」

このようにアクセントによって平仮名の音の並びの上に「文」が立ち現れました。これは、文中の自然な区切りが見えるということです。

私たちはアクセントを使って立体的に言葉を構成しています。

 

■高い音から低い音へ落とすことのトーンのずれがアクセントの本質です。

↑↓の音程差のうち「↓」こそが日本語のアクセントの本質です。

トーンを落とすことではっきりとくっきりと言葉を示すのですね。

ちなみに助詞までを含めてアクセント的な音声の1ブロックになります。

「鼻が綺麗」:「は↑なが き↓れい」

「花が綺麗」:「は↑な↓が き↓れい」

面白いですね。

また、語が複合してできた単語でも元々の音声が変化しています。

「新宿」:し↑んじゅく

「東」:ひ↑がし

「東新宿」:ひ↑がしし↓んじゅく

もう一つ類例として、

「水」:み↑ず

「お水」:お↑みず

面白いですね!

 

以下には発声のテクニックと言ってもよいですが、「ー」「っ」「ん」という3つの特殊音素について別途注意を払いたいポイントを述べます。

③3つの特殊音素を綺麗な声にするテクニック

■長音「ー」について

〈長音は少しだけ長いです〉

珈琲「こおひい」=「コーヒー」

こ(通常サイズ)お(短縮サイズ)ひ(通常サイズ)い(短縮サイズ)

※短縮サイズ=高低変化して伸びる息の音

こお=コー / ひ=ヒー

「ー」の部分は[ko]の母音[o]が息で継続的に発声されます。平仮名一つ分の同じ質量の音ですが、例えば指揮者が指揮棒を振るようなイメージで発声中に音階の変化が現れています。つまりトーンを変化させることで同じ質量を保ったまま(両手で持ったノートを軽く折り曲げるように、右手と左手の間の距離=発音時間です)発音の物理的な時間を短縮しているわけですね。

ちなみにこれは、日本語話者以外には完全にただ短い音に聞こえることがあります

母音に耳を済ませて、音程のスイングを聞き取りましょう。慣れれば日本語母語話者がそうであるように脳が自然に息の音程変化を長音「ー」として把握してくれるようになります。

 

■促音「っ」について

〈促音は後に続く平仮名一音の発声準備〉

学校「がっこう」=ga[k]ko(u)=が[k]こう

上のように小さい「っ」は一瞬間後に発声する予定の音の子音発声準備です。

○っこ ✗がっ、ということになります。

「っ」を見たら平仮名の間に子音を置いてもらいましょう。

「がkこう」と書いて読もうとすれば非常に読みにくく感じるものですが、この表記こそ私たちが自然に「学校」と発音する言葉の外国語視点での表記です。このケースに限らず困った時には自分のいつもの日本語を思い出しましょう。なにしろネイティブであるあなたが話す以上の言葉はないのですから間違いありません。

※確認しますが、日本語とは、日本語ネイティブたちのコミュニティの中で話されることで規定される言語です。

 

■撥音「ん」について

〈鼻で話すN〉

こんにちは=こ[鼻でN]にちは

○「こ」「ん」 ✗「こん」

上の○✗は特に留意して指導に臨むべき点です。

「音節」とは文や語の中の音を把握することであり、直感的に美しい音のまとまりですが「音節」の感覚の中では「ん」は吸収されてしまいます。

日本語においては「拍(ビート)」が常に「音節」に優位にある概念であることを忘れずに意識しましょう。

例に挙げた挨拶はsize5の単語に該当します。

「こ」「ん」「に」「ち」「は」・・・5つのリズムを打ちますからsize5の単語です。

[N]を一音として分離するためには、直前に発音された平仮名の音が美しい母音の響きを持って独立していることが必要な条件になります。

こんにちは、の場合「こ」=[ko]の[o]をはっきりと話しましょう。息に母音を気持ちよく響かせるということです。毎日の挨拶を思い出してください。「ん」の前の母音を確立させることは日本語の勉強をする人にとって容易いことではない場合も多いと思います。

口の筋力と最終的に言ってしまえばそれまでですが、要するに「滑舌良く話す」ということで解決します

 

 

日本語の教師をする準備として、色々な留意点を述べました。ある分量になってしまいましたが、上記のポイントだけは必ず念頭に置いてレッスンにあたりましょう。

欲を言えばまだまだお伝えしたいことがあるのですが、本日の記事では最も有意義で最重要且つ覚えておいていただきたいと思ったポイントを駆け足でお話するという形にさせていただきました。

これからお隣の外国の方に向けて日本語を教えよう、という時に「日本語とはあなたの話している言葉である」ということを忘れないでください。

あなたの日本語とは完璧な日本語であり、それ以上のモデルは存在しない模範とされるべき日本語です。

※先の件と重複しますが、ある人口のネイティブのうちでコミュニケーションに資する音声体系が言語ですから、「完全な日本語」というのは社会的なものであり、体現したり目に見て触れることはなかなか難しいものです。

 

日本語学とはあまねく分析であり、文法とは言語体系を記述する私たちの試みです。

教師の仕事とは、完璧で広大な自身の言語構造物(※イメージです)を分解して手際よく順に提示することです。

言ってしまえば教師が新たに日本語に関して日本語的な知識を得るということは日本語の教室において存在しません。

教師を始めたら、周囲の日本語に耳を澄ませましょう。

そうすればきっと、コミュニティの外側から観た日本語の形も見えてくると思います。

その過程と積み重ねの先に異文化との交流があります。

魅力的な日本人って、どのような人でしょうか。

さあ、次回第一回の「日本語のレッスン実践編」から一緒に国際人の姿を模索していきましょう。

適宜、学習項目に応じた指導のポイント又留意点を述べていきますから実戦では念頭において学習者と向き合ってくださいね。

最も大切な技術は自分の相手をまっすぐに見ることです。

教師をする上での疑問点や不明点、分からないことがあって困ったときにはいつでもお気軽にご連絡ください。

「レッスンの予約」ボタンからContactフォームを使っていただいても、直接お電話をいただいても結構です。

私たち、日本語ラーニングサポートの教師は皆様を歓迎いたします。