初級文法をマスターしよう!日本語教師の文法解説初級編~指示語を上手に使いましょう~/日本語ラーニングサポートLLC

2023/09/20 ブログ

指示語を上手に使いましょう!

「あれ」「この」「そんな」…など、指示語は私たちのスムーズな会話に欠かせないもの。

今回はそんな指示語のお話です。

 

さて、9月も半ばですが先週末からの連休も楽しく過ごされたでしょうか?冬のJLPTに向けた学習も本腰を入れて頑張っていきたいところです。今回は少し初心に帰って、「指示語」について考えてみましょう。指示語というのは「これ・それ・あれ・どれ」「この・その・あの・どの」「ここ・そこ…」といった言葉で、「こそあど言葉」といった呼び方をされることもあります。一見簡単に見えますが、簡単に理解してしまうにはもったいない奥行きのある分野です。

 

まずはじめに、皆さんは「これ・それ・あれ」についてどんなふうに使い分けているでしょうか?「これ」は近く、「それ」はちょっと遠く、「あれ」は遠くにあるもの!…というのも確かに間違いではないのですが、それだけではじゅうぶんとは言えません。

 

次の問題を読んで、正しい方を選んでみてください。

 

Q、A;<となりにいるBさんが持っているかばんを見て>( これ ・ それ )、とてもすてきだね!

  B:本当?ありがとう、( この ・ その )かばん、すごく気に入っているんだ。

 

正しく選べたでしょうか。正解は、A:「それ」、B:「この」です。

「それ」という言葉はちょっと遠くのものをいう他に、「相手が持っているもの、相手側にあるもの」について言うときに使います。Aさんからすれば、かばんは「Bさん側(相手側)」にあるので「それ」というわけです。

対して「これ」は自分が持っているもの、自分側にあるものについて言うときに使います。今回のBさんの台詞には後ろに「かばん」という名詞がついているので、「これ→この」に変わり、「このかばん」という言い方になっていますよ。

例)

A:(Bさんの近くを指さして)ちょっとそれ取って!

 B:え?どれ?

 A:それだよ、その黒い手帳。

 B:ああ、これね。はい、どうぞ。

 A:ありがとう。

→はじめから「黒い手帳をとって」とお願いするほうがもちろん親切だし結果的に早いのですが、どうしても日常こういう場面は多いですね。

 

さて、もう一つ問題です。次の文ではどうでしょうか?

 

Q、A:ねえ、去年会ったCさん、覚えてる?

  B:Cさん…?ああ、(① あの ・ その )人ね。どうしたの?

  A:先月お子さんが生まれたんだって!旦那さんはDさん。知ってる?

  B:ううん、知らない。(② あの ・ その )人、どんな人?

  A:背が高くて、優しそうなひとだよ。

 

この問題の正解は、①が「あの」、②が「その」です。

この場合の使い分けのポイントは、会話において話し手と聞き手が「お互いに知っているかどうか」ということです。

まず、話し手と聞き手がお互いに知っているものについて話す場合。今回で言えば「Cさん」についてはAさん(話し手)もBさん(聞き手)もともに会ったことがあり、すでに知っている状態です。この場合には、「あれ・あの」など「あ~」の言い方を使います。

例)

・A:昨日、渋谷でリンさんに会ったよ。元気そうだった。

 B:え、あの人、今週は北海道に出張だって言っていた気がするけど。

・A:「とりや」って、安いしおいしいし、最高の居酒屋だよね!

 B:うん、飲み会をするならあそこに限るね。 ←場所を言うときは「ここ/そこ/あそこ」を使います。

 

一方、片方が知らないものについて話す場合、こちらは「それ・その」など「そ~」の言い方を使います。今回の問題では、「Dさん」に関してAさんは知っているものの、Bさんは「知らない」と言っていますね。ですから②が正解になり、「その人、どんな人?」という質問になるのです。

例)

・A:最近ジムに通っているんだけど、そこでいつもおばあちゃんがダンベルを使って筋トレしてるんだよ。

 B:ええ!すごいなあ。その人、何歳くらいなの?

 

また、特に文章においては前の文に出たことをもう一度言いたいとき、「そ~」を使うことが多いです。

例)

・彼は近くのレストランに入り、椅子に腰かけた。その瞬間、「ドン」と大きな音がして店が揺れた。

・3年前、ある人気歌手が絵本を出版しました。それが、今年に入って大ヒットしたのです。

「彼は近くのレストランに入り、椅子に腰かけた。彼が椅子に腰かけた瞬間…」「3年前、ある人気歌手が絵本を出版しました。3年前に人気歌手が出版した本が…」というと前の文と内容が重複し、無駄に長くしつこい印象になってしまいますね。このようにすでに前の文で情報がでている場合には、「その瞬間…」「それが…」のように指示語を使うことですっきりと読みやすい文になるわけです。小説、新聞、様々なところで使われている用法です。


 

今回は指示語について学びました。日本語の学習では初級の段階で触れるため簡単なイメージがありますが、今回じっくりと学び直してみて新たな発見があった、という方も多いのではないでしょうか。特に会話やプレゼン、小説や資料などの文章を読むような場面においてはこれらの指示語は非常に重要な枠割を果たすものです。日常の何気ない会話や仕事で使う文書、電車の中の広告など、いたる所にある指示語がどのように使われているのか、時々意識してみてください。今回ご紹介した以上の発見があるかもしれませんよ。


 

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