抱く、抱える、それぞれ何と読めば良いでしょうか / 日本語ラーニングサポートLLC

抱く、抱える、・・・、
同じ漢字を使った動詞ですが、それぞれ何と読めば良いのでしょうか?
「抱」は、いくつかの読み方がとても’まぎらわしい’漢字です。
皆様は「抱く」と「抱える」の読み方で困ったことはありませんか?
3つのパターンを覚えよう!
①猫を抱く
「ねこを だく」
②希望を抱く
「きぼうを いだく」
③ストレスを抱える
「ストレスを かかえる」
この3つを覚えればまずはOKです。
上の二つの例文、①と②はどちらも「抱く」と書いて同じですので注意しましょう。
では、くわしく見ていきます。
①猫を抱く(ねこをだく)
かわいくて小さい猫さんを(←ペットでしょうか)、両方の腕でやさしく持ち上げて胸の前にホールドする。
つまり、「抱く(だく)」というアクションですね。
■赤ちゃんを抱く
■寝ている子を抱く
■花束を抱く
愛らしくて好きなものを両手で持つ、胸の前で両手を回して優しく持っている、このようなイメージです。
②希望を抱く(きぼうをいだく)
気持ちを持っている、ということです。人の心の内ですね。
■愛情を抱く
■大志を抱く
■喜びを抱く
■悲しみを抱く
■憎しみを抱く
プラスの感情だけではありません、マイナスの感情や暗い心情も「抱く(いだく)」のですね。人間らしく、嘘のない生々しい心の内側(中)がイメージとして伝わってきます。
③ストレスを抱える(すとれすをかかえる)
重いものを持っている、つまり自分を困らせる重い荷物のことでしょうか。
■プレッシャーを抱える
■悩みを抱える
■借金を抱える
■責任を抱える
■(ダイレクトですが、、)重い荷物を抱える
両手で重いものを持たされていますから、パフォーマンスが悪くなります。モノを「抱える(かかえる)」ということですね。疲れた様子がイメージできます。
以上のように3つのパターンで「抱」の動詞を整理してみました。
①好きなものを持つ
②気持ちを持つ
②重い荷物を持つ
まずはこのように考えて使い分けましょう。きっと日本語が上手に話せると思いますよ。
ちなみに「抱く(だく)」には変形のバージョンとしてよく使うものに以下のような言葉もあります。
↓
「抱きしめる」・・・両腕を回して’ぎゅっ’と強くホールドする
■泣きたい夜、愛犬の’チョコ’をぎゅっと抱きしめて眠った。
■無事に帰ってきた我が子を強く抱きしめた。
「抱き合う」・・・二人の人が向き合って、お互いに両手で相手を抱く。
■優勝が決まった瞬間、二人は強く抱き合った。
■久しぶりの再開に、空港ロビーで二人は熱く抱き合った。
「抱き上げる」・・・大切な誰かを両の腕でホールドして(あるいは力強く両手でつかんで)持ち上げる。
■生まれたばかりの我が子を、父親になった彼が大きく抱き上げた。
■玄関まで駆けてきた’チョコ(愛犬)’をカバンを放り出して抱き上げた。
う〜ん、素敵なシーンが目に浮かびますね!
両方の腕を大きく使って相手に向かうのは大きな大きな気持ちの表現に他なりません。
日本語という言葉以上に、私たちはいつもボディーランゲージ(体のモーションやポーズ)で心の中の様子を誰かに伝えているのですね。
言葉を話す時、いつも自分がどんなポーズをしているか考えたいものです。意外な心の内側に気付けるものです。
そういえば、日本人は電話で話すときにもよく頭を下げたり手を振ったりとジェスチャーを使いますね。
非常に自然なアクションで、逆に体を動かさないと自然な声で日本語を口から出せないものですが、世界的にも珍しい部類のもののようです。
状況とストーリーにコミュニケーションの多くを任せる日本語文化ならではの面白さかもしれません。
ぺらぺらの日本語上手への第一歩と思って、是非一度はあなたも試してみてください。
さて、「抱く」「抱える」については基本的なニュアンスとしての使い分けを見てきました。
それぞれに違っていますが、どれも「両腕で持つというイメージ」に同じく、実は3つのバージョンの全てを使うことのできる文面が意外にたくさんあります。
一例ですが、、
①おさない我が子を抱いて、東京の街をいつも歩いていた。
※だいて
②おさない我が子を抱いて、海に落ちていく夕日を眺めた。
※いだいて
③おさない我が子を抱えて、働き詰めに働いていたあの頃・・・。
※かかえて
↑それぞれのシチュエーション、キャラクターを考えてみましょう。
(どこで、どんな人が、どんなシチュエーションにいるか)
・・・・・・※ちなみに「おさない」とは’子供であり小さい’という意味、ここでは「おさない我が子」=自分の小さな子どもと思ってください。目も開かない赤ちゃん、というよりほんの少しだけ大きくなった赤ちゃんのイメージがよいでしょう。
①の文では、
かっこよく、強い、スタイリッシュなお母さん(以下、割愛しますがお父さんでも構いません。あくまで一般的な印象です)の思い出の場面が頭に浮かびます。
②の文では、
思い出に残るワン・シーン、お母さんの強い何かの気持ち、プラスかマイナスかは分かりませんが心からの感傷が感じられます。胸の前、腕の中にいる小さな子供は希望でしょうか、それとも複雑な愛情や不安でしょうか。
③の文では、
子供を立派に育てるために自分の幸せを二の次にして生きる人生の力強さ、たくましさ、悲しさと人間の生がイメージできますね。
「おさない我が子を抱・・・」のカタチの文でしたが、どのように「抱」を読むか、つまりどの動詞で話しているのか、で随分とムードが違ってくるものです。
普段の読書の時間から、特に振り仮名のない言葉には「どう読むかな?」と考えて頭の中で音読してみましょう。漢字と単語のバリエーションを整理して使い分けることで、自分の思っていることをとても正確に話せるようになりますよ。
①〜③の文の話者の気持ちは「、」の後の文の後半部分のエピソード(記述)によく表現されていますね。
それぞれ「抱いて(だいて)」「抱いて(いだいて)」「抱えて(かかえて)」の3つの動詞と合わせてペアになっています。
本日の記事の最後に少し練習をしてみましょう。
次の文の( )にそれぞれ「抱」を使った適切な動詞を入れて文を完成させましょう。
●若い頃は辛い、いつも将来への不安を( )毎日を過ごしていたものだ。
●あの日、大きな夢を( )飛行機に乗った。
●マリアは夕飯の時間になってもお気に入りの人形を( )離そうとしない。
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〈例題の答え〉
1・・・抱えて(かかえて)
2・・・抱いて(いだいて)
3・・・抱いて(だいて)