日本語でお話を読みましょう!落語「目黒のさんま」をご紹介します!

みなさんこんにちは!
オンライン日本語読み物のコーナーです。
今日は、中上級の方向けのお話「目黒のさんま」をご紹介します。
「目黒」というのは場所の名前で、「さんま」は魚の種類です。
それでは、どんなお話なのかさっそく読んでみましょう~!
「目黒のさんま」
これは江戸時代のお話です。
ある秋の涼しい日、お殿様が家来といっしょに目黒に出かけていました。
江戸時代では目黒はいなかの町でした。
さて、用事を済ませたお殿様、お楽しみのお昼ご飯の時間です。
しかし、家来が弁当を忘れてしまったので、みんなお腹を空かせたまま家へ帰ろうとしました。
すると、どこからかいい匂いがしてきます。
お殿様:「たいへんよいにおいじゃ。近くで何か焼いておるな。」
家来 :「お殿様、これはさんまを焼くにおいでございます。」
お殿様:「なに?さんま?※余はまだそのような魚、食べたことがないぞ。」
家来 :「さんまというのは庶民の食べ物でございまして、とてもお殿様の前にお出しする魚ではございません。」
お殿様:「余は腹がへっておるのじゃ!さんまでもなんでもいいから食事を用意いたせ!」
※余(よ):私
家来は、最初お殿様のわがままに困っていましたが、とうとう近くでさんまを焼いている農家の夫婦にさんまを分けてくれないかとお願いに行きました。
農家の夫婦もびっくりです。
家来:「お殿様がお腹を空かせていらっしゃる。さんまを少し分けてくれるか。」
夫婦:「ええ?もちろんかまいませんが…。こんな普通の魚、本当にお殿様が召し上がるんですか?」
農家の夫婦が焼いているのは庶民の魚、さんまですし、それも網の上にどんとのせて塩をかけて焼いただけで、しっぽの方は黒い炭がついているといった具合です。
こんなものをお殿様に食べさせていいのかと、夫婦も家来も思っていました。
家来:「お殿様、これは庶民の食べ物です。もし、上のものにこれが知られたら私たちは怒られてしまいます。どうか内緒にしてください。」
お殿様:「わかっておる。さあさあ、さんまはまだか。」
そして、ようやくお殿様の前に焼き立ての真っ黒なさんまが出てきました。
お殿様:「おお!これがさんまか!よいにおいじゃ!」
一口さんまを食べると…
お殿様:「なんじゃ!これは!!」
あまりのおいしさにお殿様は目をまるくしました。
というのも、お殿様がいつも食べている魚は鯛であり、それも家来が毒見をして一時間たった冷めきった鯛を食べているわけです。
ですから、こんなに温かくてあぶらがのった魚は初めてで、お殿様は感動しました。
うちへ帰った後もお殿様はずっとさんまの味が忘れられませんでした。
ある日、お殿様は次のお城の宴会(パーティ)でなんの料理が食べたいかと家来に聞かれました。
お殿様:「余はさんまが食べたい。」
ついついさんまのことを話してしまいました。
さて、料理人たちは困りました。
料理人:「お殿様がさんまを??本当か?」
おかしいと思いながらも、料理人たちはさんまを探しに市場へ行きました。
しかし季節は一月、さんまは秋の魚ですから、市場にはほとんどありません。
やっと日本橋でさんまをみつけて、買ってきて料理を始めました。
お殿様がお腹を壊してはいけないと蒸してさんまのあぶらを全部落とし、小さい骨も全部とって、だんごのように丸くしたさんまをスープの中に入れてお殿様の前に出した。
お殿様:「これがさんまか?」
お殿様はさんまのだんごを食べてみましたが、目黒で食べたあのさんまとは全然違って、おいしくないです。
お殿様:「おい!このさんまはどこで買った?」
料理人:「日本橋でございます!」
お殿様:「だからか…やっぱりさんまは目黒に限る!!」
いかがでしたか。
「目黒のさんま」は落語のお話です。
落語の中でもかなり有名ですし、短いお話なので親しみやすいですね。
ところで、みなさんはさんまという魚を食べたことがありますか。
さんまは秋が旬の長細い形をした魚で、お刺身もいいですが、焼いて食べると脂がのっていてとてもおいしいです。
まだ食べたことがないという方は、今年の秋、スーパーの魚コーナーで見てみてください。
大根おろしを添えてさっぱりといただくのも最高ですよ。
さて、ここで少し日本語の復習をしましょう!
お話の最後、お殿様が「さんまは目黒に限る!」と言っています。
この「に限る」とはどんな意味でしょうか。
「に限る」は、話している人が一番いいと思っているものやことを言う時に使われます。
また、「やっぱり」という言葉と一緒に使うことも多いです。
例)「夏はやっぱりアイスクリームに限る!」
「くぅ~~!お風呂あがりは冷えたビールに限るなぁ!」
「日本で旅行するなら、沖縄に限る。」
「ホラー映画はやっぱり大きなテレビで見るに限る。」
「あの二人がけんかしているときは、何も言わないに限る。少しでも余計なことを言うと巻き込まれるぞ。」
このように、名詞や動詞の後につけて使うことができます。
みなさんも是非使ってみてくださいね。
それでは、今日はここまでにしましょう!
また次のブログで!