日本語文法が分かる!教師の文法解説初級編~「~んです」を使って話してみましょう~/日本語ラーニングサポートLLC

日本語文法が分かる!教師の文法解説初級編~「~んです」を使って話してみましょう~/日本語ラーニングサポートLLC
先週、今週と寒暖差が大きく、体調に気を遣う日々が続きますね。
沖縄では先週梅雨入りが発表され、少しずつ夏の足音が大きくなってきているようにも感じます。日本語を学ぶ皆さんは、7月のJLPTも意識しつつ計画的に学習を進めていきたいところですね。
さて、今回は「~んです」を使った話し方をマスターしましょう。どんな時に使うのか、どうやって使うのかを知れば、会話表現が大きく広がりますよ。まずは下の二つの文を見比べてみてください。
① 「そのかばん、すてきですね。どこで買いましたか?」
② 「そのかばん、すてきですね。どこで買ったんですか?」
似ている文ですが、文末が違いますね。それぞれどういった印象を受けますか?
①は純粋に情報を尋ねる、という文です。この場合、どこで買ったのかという情報を得るというだけです。対して②は、相手の持っているかばんに興味を持っていて、そのかばんについてもっと色々知りたい!というニュアンスが出ます。自分が興味を持っていることが相手に伝われば、相手もたくさん話してくれて会話がはずみますね。こんなふうに、「~んです」という表現には会話を前に前に進める力があるのです。以下、どんな場面で使えるのかを確認してみましょう。
■「大きなカバンですね。旅行に行くんですか?」
■A「かっこいい時計ですね。いくらしたんですか?」
B「2000円です。アウトレットで、とても安くなっていたんです。」
目の前の相手の様子や言葉から情報を得て、自分が思ったことを確認したり興味を持って質問したりするときに使います。
例えば一つ目の例文では、相手を見て、「大きなカバンを持っている」という(視覚的な)情報を得ます。そして、「旅行に行くのかな…?」と自分が思ったことを相手に確認するわけです。二つ目の文は、冒頭に読んで頂いた②の文と同じですね。相手の時計を見て、それに興味を持ってさらに情報を聞き出すのです。また、それに対する返答にも「~んです」を使って新しい情報を伝えることができます。
例)・「おもしろそうな小説ですね。どんなお話なんですか?」
・A「実は最近、J-popにはまっちゃって。」
B「へえ~、どんな曲を聴くんですか?」
・「眠そうですね。昨日眠れなかったんですか?」
・「(泣いている相手を見て)どうしたんですか?」←相手が普通の様子でない時、例えば気分が悪そうな時、泣いている時、反対に一人でニヤニヤと笑っている時などに、その様子を見て何があったのか聞く言い方です。これに対する返答も、例えば「実は、恋人と別れてしまったんです。」のように「~んです」を使って言うことができます。
■A:「昨日、どうして会社に来なかったんですか?」
B:「すみません。熱が出て、病院へ行っていたんです。」
ある事態や状況について、その理由を尋ねたり、理由を説明したりする時に使います。
例)・A「30分も遅刻ですよ。何かあったんですか?」
B「すみません。電車が事故で遅れてしまったんです。」
・A「昨日の飲み会、途中で帰ってしまいましたよね。楽しくなかったんですか?」
B「いいえ、ちょっと用事があったんです。」
理由を言うときは「~ですから」を使う、というのは既に学習した方も多いと思いますが、「~んです」を使うときは「~ですから」を使わなくても理由を表すことができます。「電車が事故で遅れてしまったんですから。」「用事があったんですから。」とは言わず、例文のとおり「~んです」のみを使えば大丈夫、ということです。
■A:「土曜日、一緒に映画を観に行きませんか?」
B:「すみません、土曜日はちょっと。家族と北海道に行くんです。」
相手からの質問やお誘いに対して否定的に答えるとき、その理由や自分の状況を説明するときに使います。使い方は先ほどの例文と同じで、「~ですから」を使わずに理由を表現します。
例)・A「明日の送別会、来られないんですか?」
B「はい、今日の午後から三日間、広島へ出張なんです。」
・A「お昼、一緒に食べに行きませんか?」
B「すみません、今日はお弁当を持ってきているんです。」
特にお誘いを断るときには、その理由をしっかり相手に伝えられると良いですね。
■「おみやげを買いたいんですが、いい店を教えていただけませんか。」
■「大阪城へ行きたいんですが、どこで降りたらいいですか。」
相手にお願いをしたり、アドバイスや指示をしてもらったりする際に、自分の状況を説明するために使います。一つ目の例文では「いい店を教えてほしい」というお願いをするために「おみやげを買いたい」という自分の希望・状況を伝えています。二つ目の例文についても、「どこで降りたら良いか」と質問するためには「どこへ行きたいか」を説明する必要がありますね。
例)・「この漢字が読めないんですが、読み方を教えていただけませんか。」
・「秋葉原へ行きたいんですが、何番の電車に乗ったらいいですか。」
さて、ここまで「~んです」の使い方と例文を見てきました。相手に興味を持って会話を進めるとき、自分の状況を説明するときなど様々な場面で活躍する表現ですから、使いこなせるとコミュニケーションの幅がぐっと広がりそうですね。
最後に注意点を一つだけ。「~んです」は様々な場面で使うことができますが、使わないほうが良い場面もあります。例えば自分の名前や会社の名前など、基本的な情報を伝えるだけ、という場合。「わたしは○○社の長谷川なんですけど…」などと言うと、押しつけがましく高圧的な印象になってしまいます。事務的な情報のやり取りや相手が既に知っている情報を言う場面など、あえて強調する必要がない時には使用を控えましょう。
冒頭に書いたとおり、「~んです」には会話を前に進める力があります。今回ご紹介した例文を声に出して読んでみてください。流れるような日本語を感じて頂けたのではないでしょうか?使い方に注意が必要な場面もありますが、「相手とたくさん会話をして相手のことをもっと知りたい!」「自分のことをもっと伝えたい!」という気持ちが上達への近道です。ぜひ身のまわりの方との会話で使ってみてくださいね。
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