「お伝えてください」は正しい日本語?/ 日本語ラーニングサポートLLC

皆さん、こんにちは。
日本語ラーニングサポートの楠田俊之です。
毎日の勉強をお疲れ様です。
今日は授業でいただくことの多い質問から一題を持ってきましたので一緒に考えてみましょう。
表題の言葉 ⇒「お伝えてください」
これは残念ながら日本語の誤用ですが、ついつい間違えて使いやすいフレーズではないかと思います。
ビジネスのシーンなどでよく用いるだけに
■ちゃんとした敬語で話そう
■丁寧な日本語を話さなきゃ!
マナーよく身構えるだけに犯してしまうミスでもあります。
例えば、
場面:取引先を辞去する時
相手:取引先の担当者
本日は留守で会うことのできなかった懇意の’山田’課長へ、、、
あなた「山田さんにも、よろしく伝えてください」
このように話したいのが本来の形ではないかと思います。
そして丁重な態度で敬語を使うと↓↓
あなた「山田さんにも、よろしくお伝えください」
上のように話せたら素晴らしいと思います。
つまり、相手に何らかの行動や対応をお願いする文型
〈 動詞 + ください 〉
を使用する場合には、
①テ形動詞 + ください
②お + 動詞連用形 + ください
このように①、②のどちらかの型を選択しなければなりません。
①のテ形動詞を用いる場合はもっとも基本の部分で学習する項目ですから皆様すでにしっかりと勉強をなさってきていると思います。
samples:
伝える ⇒ 伝えて ⇒ 伝えてください。
使う ⇒ 使って ⇒ 使ってください。
送る ⇒ 送って ⇒ 送ってください。
など、このように動詞の基本形からお願いと依頼の文型(フレーズ)を作ることができますね。
では、
②お + 動詞連用形 + ください、左記のように敬語で話す場合、
まずは名詞同様に取り扱える部分を使用する動詞から抜き出しましょう。
これは、「動詞ます」から「ます」を取り去った形にするということです。
例を上げますと、
Aさん:「お帰りはお車ですか?」
比較的よく耳にするフレーズではないかと思います。
上のケースでは「帰ります」から’ます’を取り去って⇒「帰り(かえり)」
この「帰り」を
■あなたがこれから◯◯へ帰る行動、つまりそのルートや方法その他の付随するイメージを包括して「帰り」という名詞扱いする言葉にまとめているわけです。
水が「お水」、茶が「お茶」のように名詞へは「お」をつけて丁寧な言葉にします。
※動詞から抽出できたこのタイプの言葉には「お」をつけましょう。動作性のインスタント名詞といったところでしょうか。
「お」+「帰り」=「お帰り」
こうしてできた丁寧語は名詞扱いですから’テ形’にはしません。
よって、お願いの「ください」を直接プラスします。
「お帰り」+ ください ⇒ お帰りください。
こんな時に使いますね。
A:「今日は雪になるそうですから(足元には)お気をつけてお帰りください」
※出来上がった参考文と前後の会話を想定して、状況は語の性質によって常に変わりますね。
一つ、一般に耳慣れた言葉をサンプルとして解説しました。
ですから、元の問題に戻って敬語の形を考えますと、
①' 伝えてください
動詞「伝える」(≒伝えます)
「お」+「伝え」+「ください」
②' お伝えください、
上の形を正しい日本語として使うべきです。
よって、2つの文
①「山田さんにも、よろしく伝えてください」
②「山田さんにも、よろしくお伝えください」
①、②がそれぞれ作られることになります。
どちらも指し示す内容としては(ほぼ)同じものですから、ではどちらの文を話すことが正しいのか。
それは残念ながら明確に使用場面を分割する解答を提示することが難しいと言わざるを得ません。
当然②の敬語の文は丁寧であり、つまりフォーマルな言葉の形ですから基本としてビジネスの場面では②を選択することに問題はないように思えます。
敬語とはどんなものか、ひいては’礼儀正しい’とはどのようなことであるのか。
条件は数多くありますね。
上下関係に限らず敬語とは話者間の距離を決めるものですから、
※初対面の人には敬語で話すことが多いでしょう?
距離感やお互いの立場に応じた言葉の選択が重要です。
年齢、性別、職業、etc.etc.
もちろん万人の資質は平等であるべきであり、職業に貴賎なし、
しかし、女性が都営大江戸線某駅の長大な階段を前に大荷物と途方にくれていれば手を貸すべきですし、
混んだ車内ではおじいさんおばあちゃんにもちろんのこと席を譲る、
年若くとも笑顔の対応がこまめに気の利く店員さんには「ごちそうさまでした」と帰り際に自然な挨拶が出るもの、
私感から述べましたがこのような差異を指して社会的な立場、
個人のステータスの総合と総合からお互いの立ち位置が決まり適切な言葉の使い分けをしなければならないのですね。
■相手を見ましょう
ますは自分の向かい合う相手をしっかりと見つめること、これが第一歩です。美しい社会的な日本語はここから始めます。
親しい相手には、近くて柔らかい言葉で話しましょう。
※ランチタイムの一杯の珈琲が同僚との距離を縮めるように
緊張感持って接するべき相手には姿勢を正して身なりの良い言葉で伝えたいことを丁重に話しましょう。
※あなたの清潔なスーツと革靴がビジネスの成功を呼び込むように、
言葉の形には、同じ内容に多くのバリエーションを用いることができてまるでレゴで作るパズルのようです。
どう話したら一番良いのかな、
それはたくさんのサンプルを読み覚えることと授業での練習、そして多くの失敗の繰り返しの上に知識としても技術としても身につく日本語の語学力(スキル)です。
今日も一歩先の日本語を目指して一緒に頑張ってまいりましょう。
日本語ラーニングサポートLLCは日本語の勉強を頑張る皆様のキャリアアップを全力で応援いたします。