ビジネス日本語の発音を考える/「お世話になっております」「ありがとうございます」の挨拶から

2023/01/04 ブログ

いつも私たちのブログをご覧いただきありがとうございます。

代表教師の楠田俊之です。

2023年も三が日があっという間に過ぎて世の中の賑やかさが戻ってきましたね。

本年もよろしくお願いいたします。

 

さて、今回のテーマは気になる発音を取り上げてみました。

ビジネス日本語のトピックから挨拶を2つほど、

①「お世話になっております」

②「ありがとうございます」

 

どちらも代表的な挨拶で、会社にお勤めの方は必ず毎日耳にする言葉ではないかと思います。

頻繁に使用する言葉だからこそイレギュラーや難しさが隠れているもの、

ビジネス日本語のまさに「顔」であるこの2つの言葉を一緒に考えてみましょう。

 

まずは、

①「お世話になっております」

上のフレーズを取り上げます。

 

読んでみてください。

■世話(せわ/sewa)

■お世話(おせわ/osewa)

はっきりと口に出して、耳にはよく集中してもう一回、

せわ VS おせわ

いかがですか?

音のスライドの位置が変わっていることに気づいたでしょうか。

ネイティブスピーカーの発音ならば必ず「せわ」と「おせわ」で発音が違います。

※一部方言を本日のブログ記事では対称に含めません。

日本語の発音で難しいことの一つはアクセントです。

音に強弱をつけるストレス・アクセントではなく、

音と音の高さが上下にずれることによるピッチ・アクセントが存在しているのですね。

そして、「(文中の)単語の1つ目の音と2つ目の音は必ず音程が変化する」というのが絶対的なルールです。

※日本語の「音」という単位は大雑把に仮名の一文字と考えてください。ここでは実践的に、この理解で問題ありません。

つまりそうすると、

■せわ・・・「せ」と「わ」の間で音がスライドする。

※「せ」が低く、「わ」が高い

■おせわ・・・「お」と「せ」の間で音がスライドする。

※「お」が低く、「せ」が高い

上のように両者に単語としての音の型が決められていることになります。

「世話」という単語が、ていねいの「お」が頭に着くことで発話中に違う音になってしまうのですね。

※ちなみに「お世話」の場合は「せ」と「わ」の間にも音程の変化が見られ、「わ」が低い音になっていますね。(世話だけの時と比べて音の高低が逆転するわけです)

小さなようで大切なポイントです。

音の美しさは顔つきや表情(決して生来的な造形のことではありません。心は表出するものです)に並んで、相手に自分を印象付ける要素です。

ビジネスの成功は美しい挨拶から始まると思って、しっかりと練習しましょう。

■お世話になっております

この言葉を発するときに「世話」をボキャブラリーとして意識してはいけません。

※「世話」と「お世話」は特に音声的に完全に別単語であると思って良いです。

丁寧の「お」がつけば、それはもうビジネス用、あるいは丁寧語としてのお世話なのです。

日本語を話すときにはひらがなの一音ずつをキーボードでタイプするように話す。滑舌良くはっきりと、これが基本です。

「お世話」は三音語(size3)、

◯●◯(トン、トン、トン)=お、せ、わ

さあ、このリズムで音を口に出してみましょう。

「おせわo,se,wa」

■お世話になっております

どうですか?納得のいくビジネスパーソンの挨拶が発音できたでしょうか。

 

②ありがとうございます

毎日聞く言葉ですね。

何が難しいかと言えば、常にあらゆる場面で取り交わされる言葉なだけに個人的、また世代的職業的な癖等が現れやすいところでしょうか。

耳を澄ませてみてください。

実に千差万別の「ありがとうございます」が聞こえてくると思います。

先に述べたように日本語の発音の基本はひらがなをタイピングするような音の連続ですから、やっぱり滑舌良く口をはっきりと動かして一音ずつ、

あ り が と う ご ざ い ま す

⇒ありがとうございます

妙に雰囲気として「〜」や「!」を含ませないことも美しい日本語としては大切ですね。

会議や打ち合わせ、電話応対の結びにも多く用いるためか気になる点としては、、、

「う」がつまるケースが多いことです。

さて、この「う」は日本語の教室では’長音’と呼ばれるものですが、

では長音とは何でしょうか。

決してそんなに長い音ではありません。例えば「コーヒー」を例にとって考えましょう。

■こ、お願いします

いかがですか。日本語のネイティブであれば上のような発音は絶対に口にしません。

「こひ」お願いします、この方がまだ実際に近いかもしれません。

より正確にこの記事スペース上に表記するのであれば

■こ- ひ- お願いします

(=こ-↑ひ-↑)

長音とはブレス、息の通ることで出す音です。

こ(ko)は息を継続すること、つまり長くブレスすることでkがドロップして「おo」に変化し、

ひ(hi)はブレスで「いi」に変化していますね。

息で響かせる母音部分をトーンアップすることで長音が完成されています。

※丁度オーケストラの指揮者がタクトを振っているところをイメージすると音を上げやすいと思います。くいっと

 

長い音とは、つまりブレスして続く母音部分の音階上昇です。

かなの通常の一拍には短く、しかし確かに存在する’決まった発音時間’があります。

大切なことは省略するでもなく、表記のとおりに丁寧に発音しすぎるでもなくブレスした母音をぐいっと上げてやることです。これはしっかりと音を上げてやらなければなりません。

この音階の操作で綺麗な音が作られています。

ですからビジネスの実戦でも長音の美しさを大切にきれいな日本語を話しましょう。

急いでいるときも慌てても、また嬉しくて仕方がないときも、

まずは⇒ありがと- ございます

「と」にブレスを使って変化した息の音「おo」をぐいっと引っ張ってやりましょう。

ありがございます

いかがですか?美しい挨拶が発音できたでしょうか。

きれいな発音は緊張したビジネスの場までも和ませるものだと思います。

 

さあ、2023年も徐々に動き出しますからまた師走の時期までたくさんの出来事と出会えるように、

そして振り返って素晴らしい一年だったと感慨に浸れるような年になるように勉強もキャリアアップも思い切り頑張っていきましょう。

本格的な日本語のトレーニングにはプロの教師のレッスンをおすすめします。

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