日本昔話を読んでみましょう。「姥捨て山」というお話をご紹介します!

2022/12/15 ブログ

皆さん、こんにちは!

日本語で昔話を読んでみませんか?

本日は「姥捨て山」というお話をご紹介しようと思います。

なんだか恐ろしいタイトルですが、怖い話ではありませんのでご安心ください。

それでは、是非最後まで読んでいってくださいね。

 

 

「姥捨て山」

昔々、あるところに小さくて貧しい国がありました。

ある時、この国の殿様が、年寄りは使い物にならないと言って、自分の親が60歳になったら山へ捨ててこなければならないという法律を作りました。

国民はもちろんこの恐ろしい法律に反対していましたが、命令に背いた者は厳しく罰せられていたので、誰も反抗できませんでした。

そして、年寄りを捨てる山を姥捨て山と呼んで恐れていました。

 

この国には、心優しい男とその母親が住んでいました。

2人は仲良く平和に暮らしていましたが、母親も年をとり、とうとう姥捨て山へ行かなければならない日がやってきました。

その日、男は泣きながら母親を背負って、山へ向かいました。

「なあに、悲しむことはねぇ。人はいつかは天国に行くんだからよ。」

母親は男を慰めました。

山を登っていくと、人影もなくなり、道もだんだん険しくなりました。

暗い山道を男は下を向きながら、とぼとぼと歩いていました。

ふと後ろを見ると、母親が木の枝をぽきぽきと折って、道に落としていました。

「かあちゃん、何してるんだ?」

「こうしておけば、お前が帰るときに、道に迷わなくてすむじゃろ。」

これから山へ捨てられるというのに、こんな時まで自分のことを心配してくれる母親を思うと男は、もっと悲しくなってきました。

「だめだ。かあちゃん、家へ帰ろう。」

「そんなことしたら、お前がひどい目に遭うぞ。」

「かあちゃんを山へ捨てるなんて、おれにはできねぇ。」

そう言うと、男は来た道を走って家へ帰りました。

そして、家の床下に穴を掘って、そこに母親を隠しました。

「かあちゃん、こんなところで申し訳ねぇ。我慢してくれ…。」

 

ちょうどその頃、隣の国の殿様が、この国に無理難題をふっかけてきました。

「灰で縄を編んでみよ。それができなければ、この国に攻め込むぞ。」

殿様は、攻め込まれては困ると、国中に立札を立て、この問題を解決できる者がいないか探しました。

立札には、この無理難題を解決できた賢い者には、たくさんの褒美を与えると書きました。

戦争が起きては大変なので、男もいろいろと考えましたが、いい案が浮かびません。

そこで、母親に聞いてみました。

「ああ、それなら簡単さ。縄を作って、塩をよく塗りこんでから、燃やしてみろ。」

男は言われた通りやってみました。

すると本当に灰で縄が作れました。

男は、喜んで殿様のところへ持っていくと、殿様はたくさんの褒美をくれました。

しばらくするとまた隣の国から、こんどは、小さな曲がりくねった穴が開いている石に糸を通してみよという難問が届きました。

男がまた母親に相談すると、

「それはな、穴の片方に砂糖を塗っておくんじゃ。そうして、反対の穴から糸を結わえたありを入れる。そうすれば、ありが砂糖を目当てに反対側の出口まで行くじゃろ。」

と、教えてくれました。

男がその通りにやってみると、本当に石に糸を通すことができました。

急いで殿様のところへ持っていくと、殿様もとても驚いて、またたくさんの褒美をくれました。

しばらくすると、また隣の国から難問が出されました。

こんどは、打たずに鳴る太鼓を作れというものでした。

男はまた母親に聞きました。

「太鼓を作るときに、中に蜂を入れるんじゃ。そうすれば、蜂が太鼓の中で暴れて、勝手に音が鳴るぞ。」

「なるほど!こりゃ、すごい。」

男はできあがった太鼓を持って殿様のところへ行きました。

殿様は、たいそう驚いて、

「国中の人々が考えても、思いつかなかった方法だ。今までのは、全部お前一人で考えたのか?」

と聞きました。

男は、恐る恐る今まで母親に解決してもらっていたことを殿様に話しました。

すると、殿様はしばらく黙り込んで、こう言いました。

「ふむ。年寄りは役に立たないと思っていたが、お前の母親の知恵がこの国を救った。年寄りの知恵は、やはり必要なのだな…。」

そうして、60歳になった親を姥捨て山に捨てに行くというこの国の恐ろしい法律はなくなり、いくつになっても家族と仲良く暮らせるようになったそうです。

 

 

いかがでしたか?

人間を山に捨ててしまうなんて怖いおふれですよね。

殿様は「お年寄りは役に立たないから」といっていましたが、この物語で出てきた国は、とても貧しく、食料が不足していたため口減らしのために老人を姥捨て山に置き去りにしていたという説もあるようです。

(口減らしとは、食料が乏しくなってきたときに、家族やその集団から、子供やお年寄りなどを追い出して、養うべき人数を減らすことです。)

ですから、こういったルールを変えることができたこの親子の愛や、母親の知恵は本当にすごいですよね。

 

それでは、今日はここまで!

このブログでは、日本語を学習している皆さんのお役に立てるような物語や問題をたくさん載せていますので、是非また遊びに来てください!

良い週末を!