落語を読んでみましょう!「まんじゅう怖い」をご紹介します!

2022/12/02 ブログ

みなさん、こんにちは!

12月に入り、外もずいぶん寒くなりましたね。

年末の忙しいこの時期、コロナやインフルエンザに気を付けてお過ごしください。温かい飲み物を飲んだり、お風呂にゆっくり浸かったりして、体を温めながら疲れを取ってくださいね。

さて、今回は落語のお話を紹介します。「まんじゅう怖い」というお話です。

落語は、このブログでも何度か紹介しているので、もし興味があればほかのお話も見てみてくださいね!

 

「まんじゅう怖い」

あるとき、町の男たちが部屋に集まってこんな話をしていた。

「おいおい、この世で一番怖いものってなんだい?」

「そりゃ、蛇に決まってらぁ。あんなにょろにょろした動きが気味悪いや。」

「狸が一番怖いよ。何にでも化けて出てくるそうじゃないか。お化けに会うのはごめんだね。」

「俺は、毛虫だね。一匹だけでも気持ちが悪いのに、何匹か集まってモゾモゾしているところを見たことがあるかい?背筋がぞっとするぞ。」

「俺はやっぱり蜘蛛が嫌いだ。蜘蛛の巣なんかねばねばして気持ち悪いじゃないか。」

「いやいや、一番はアリだよ。一列でぞろぞろ歩いているのをみると…」

と、みんなが自分の怖いものを話していたが、一人だけそれをじっと黙って聞いている男がいた。

「おい、熊さん。熊さんは何が怖いんだい?」

「え?俺には怖いものなんかないよ。」

「蛇や毛虫も怖くないのか?」

「ちっとも怖くないね。お前らな、大人の男が集まって、あれが怖いだの、これが怖いだの本当に情けねえなあ…。」

「じゃあ、熊さんは蛇を見つけても驚いたりしないのか?」

「当たり前だよ。蛇なんか、頭が痛いときに頭に巻いてはちまきにしてやる。蛇のほうで勝手に締め付けてくれるからひんやりして気持ちがいい。」

「ええ…」

「狸が化けて出てきたら、掃除や洗濯なんかをやらせておけばいいじゃないか。毛虫は、まとめて箸に縛り付けて歯ブラシにしてしまうね。」

「蜘蛛やアリは?」

「蜘蛛は、納豆と一緒に混ぜれば粘りが出らあ。アリは、何匹か捕まえてご飯の上にのせれば、ごま塩だ!ちょっと動いて食べにくいけどな!」

と、威勢よく話していた熊さんだったが、突然…

「おっと…。」

と言って、黙り込んでしまった。

「おいおい、熊さん、どうしたんだい?」

みんなは、熊さんの顔を覗き込んだ。

「いや…。急に怖いものを思い出しちゃったんだよ…。」

「ええ、熊さんの怖いものって何なんだい?教えてくれよ。」

「一度しか言わないぞ。ま…まんじゅう。」

「まんじゅう!?まんじゅうって、あの~まんじゅう屋で売ってる、中にあんこが入った甘いお菓子のことか?」

「おい…それを大きな声で言うなよ…。ああ、思い出しただけで気分が悪くなってきた…。ちょっと隣の部屋で寝てくるよ。」

そういって、熊さんは隣の部屋に布団を敷いて寝込んでしまった。

これを見て、みんなはあれだけ威張っていた熊さんの枕元にまんじゅうを積み上げて怖がらせてやろうといういたずらを考えた。

そうして、集まっていた男たちはみんな、町へ行ってまんじゅうをたくさん買ってきた。

酒まんじゅう、栗まんじゅう、温泉まんじゅう、蕎麦まんじゅう、紅白まんじゅう、葬式まんじゅう…

買ってきたまんじゅうをおぼんの上に山積みにし、そっとふすまを開けて、寝ている熊さんの枕の横に置いた。そして、隣の部屋から

「おーい、熊さん。そろそろ起きなよ。もうお開きだよ。」

と、呼んで起こした。

「ああ、そろそろ起きるよ…。でも、まんじゅうのことは絶対言わないでくれよ?」

「わかった、絶対言わないよ。」

「うん、じゃあ……うわあ!!まんじゅうだー!!!お前ら、ひどいじゃないか。まんじゅうをいっぱい置いていくなんて!」

この叫び声を聞いて、こちらの部屋ではみんなお腹を抱えて笑っていた。

「ははは、熊さんが怖がってるぞ!」

「ああ、まんじゅう怖い!まんじゅう怖い!まんじゅう怖いぞ~。ああ、まんじゅうおいし…いや、怖いぞ~。」

熊さんは、しばらく怖がっていたが、だんだん様子がおかしくなってきた。

「おいおい、なんだか様子がおかしくないか?」

「そうだね。歌っているみたいだ。ちょっと、ふすまを開けてみよう。」

すーっとふすまを開けて、隣の部屋を見てみると、熊さんが怖い怖いと言いながら、まんじゅうを頬張っているではありませんか!

「おい、熊!!まんじゅうが怖いというのは嘘だったんだな?お前が本当に怖いものを言ってみろ!!」

「ははは、ごめんごめん。そうだな…今は、温かいお茶が怖い。」

 

 

 

いかがでしたか。

このお話は落語なので、少し日本語上級者向けですが、楽しんでいただけたでしょうか。

何回読んでも面白い、これが古典落語の魅力です。私も本物の落語は、テレビでしか見たことがありませんが、落語家さんの表情、間の取り方、台本の言葉のチョイスなど全てが絶妙で、早く本物を見てみたいと思っています。

さて、今回の「まんじゅう怖い」の意味、みなさんはわかりましたか?また、最後に「お茶が怖い」と言った熊さんの気持ちや、このあとどんなストーリーがあるのかなど、いろいろ想像してみてください。

 

それでは、また次の機会に会いましょう!